1997 Fiscal Year Annual Research Report
機械的ストレスにより生じた骨折遷延治癒における石灰化機序の分子遺伝学的解明
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09771092
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
藤井 幸治 徳島大学, 医学部, 助手 (20284325)
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Keywords | 骨折治癒 / I型プロコラーゲン / 機械的ストレス |
Research Abstract |
平成9年度の本研究では、まずモデル動物の作成を行った。Wistar系成熟雄ラットに腓骨骨折を作成した。左脛骨前縁を露出し、脛骨粗面より10mmの位置で剪刀にて脛骨を切離した後、同高の腓骨骨幹部を経皮的に圧迫し横骨折を作成した。固定群は、脛骨粗面より脛骨の長さに切った22ゲージのカテラン針を挿入し髄内釘とし、固定した。非固定群は順層縫合後、皮下組織に絹糸を懸け、脛骨骨折部を90°屈曲位にて数日間縫着した。骨折後、0、3、7、10、14、21、28日目に屠殺し、脛骨骨折部周辺の全仮骨部を摘出し、筋組織・骨膜を除去した後、ノザンプロット解析のため、total RNAを抽出し、type I procollagen alpha chain(proCOL1A)cDNA,lysyl oxidase(LOX)cDNA,及び alkaline phosphatase(ALP)cDNA プローブを用いたノザンプロットによる遺伝子解析を行った。 その結果、固定群・不安定群とも10日以降でproCOL1A及びALPの発現がみられた。LOXmRNAは骨折早期より認められ、発現量は変化しなかった。固定群ではproCOL1AmRNAの発現量は骨折後1週でピークに達し、その後漸減した。固定群のALPmRNAは骨折後2週まで上昇し、その後の発現量はほぼ一定であった。非固定群ではproCOL1AmRNAの発現量のピークは骨折後1週であり、発現量は固定群に比べ有為に高かった。ALPmRNAは3週以降やや増加するもののその後減少した。 今回の我々の研究により、in vivoにおいて仮骨構成細胞は、骨折部に生じた不安定性に対し、Type I procollagen、lysyl oxidaseの発現量の増加を伴い、コラーゲン線維の合成と架橋形成を促進させ骨基質を強化することで対応していると考えられる。また、骨芽細胞の成熟度の指標であるalkaline phosphatase mRNA発現量は両群とも緩やかに上昇するが、固定群ではALPmRNA発現量が非固定群の2-3倍に達しており、脛骨固定による力学的作用により腓骨骨折部仮骨の骨芽細胞の成熟のスピードは増加していることが示唆された。 すなわち、骨芽細胞は力学的安定化でより成熟しやすい性質を持つことが明らかとなった。
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Research Products
(1 results)