2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J02476
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村上 祐二 Kyoto University, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | プルースト / ドレフュス事件 / 『ジャン・サントゥイユ』 / 反ユダヤ主義 / フランス |
Research Abstract |
『プルースト作品におけるドレフュス事件の表象』研究の前半部「『ジャン・サントゥイユ』におけるドレフュス事件」の研究を完成させた。まず『ジャン・サントゥイユ』の草稿資料、裁判記録、当時の日刊紙等の一次資料をパリ国立図書館等にて調査・収集し、これに基づき同作品のドレフュス事件を扱った13の未完断章に現れた同事件へのすべての直接的言及を、批評校訂版であるプレイヤッド版および基礎的自伝研究であるタディエの『評伝プルースト』におけるおびただしい誤りを修正しつつ正確に同定したうえで、13の未完断章の執筆順序を証明し、プレイヤッド版の不正確な順序を否定し、別の順序に並べ替えた。この作業過程でプルーストが同小説にドレフュス事件を取り込む際、この事件とは無関係の二つの事件に関連する裁判をそこに忍び込ませていることを発見した。すなわち1896年に行われたマックス・ルボディの死に関する裁判および1897年から1898年にかけて行われた医療事故に関するラポルト裁判である。またプルーストの伝記研究を修正する発見があった。ポール・ブリュラの伝記的小説『栄光製造業者』(1900年11月出版)を読み、1895年1月のドレフュス位階剥奪式の描写に感銘を受けたプルーストが面識のないブリュラにコンタクトを取り、1900年11月から1901年2月頃にかけて訪問していたのである。これまでプルーストの草稿・書簡を含めた作品にブリュラの名が現れることはなかったが、この発見により伝記研究レベルにおいて1900年から1901年のプルーストの関心の一部が解明されるとともに、これまで謎に包まれていたドレフュス事件発生時(1894-1895年)のプルーストの反応を推定することが可能になった。以上の成果を11月7日、熊本大学にて行われた日本フランス語フランス文学会の秋季全国大会にて口頭発表の形で提示した。
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Research Products
(1 results)