2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J02529
|
Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
椨 康一 Tokyo Medical and Dental University, 難治疾患研究所, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 脳腫瘍 / グリオーマ幹細胞 / CD133 / プロモーター / ETS / Ras / ERK / アストロサイト |
Research Abstract |
腫瘍幹細胞は腫瘍の拡大・再発に寄与する責任細胞であり、その性状解明が求められる。脳腫瘍幹細胞の維持機構を解明するため、本年度はグリオーマ幹細胞の濃縮マーカーであるCD133のプロモーター解析を行い、以下の成果を上げた。(1)CD133遺伝子を過剰発現した不死化ヒトアストロサイトをNOD/SCIDマウスの皮下に移植したが腫瘍形成は確認されず、CD133分子の造腫瘍能に対する直接的な関与は示唆されなかった。(2)そこでCD133遺伝子の発現調節機構がグリオーマ幹細胞の本質を理解するヒントになると考え、プロモーター解析を行った結果、ETS蛋白がCD133の転写に関与していることを見出した。(3)ETS2遺伝子を不死化アストロサイトに過剰発現したところ、CD133mRNA量の増加を確認することができたが腫瘍形成能の獲得までには至らなかった。(4)そこでETSの上流に位置するRasの活性型を導入したところ、CD133mRNA量が上昇し、加えて神経幹細胞用無血清培地内において高頻度にneurosphere様コロニーを形成した。さらにNOD/SCIDマウスへの皮下移植で腫瘍形成が確認されることから、Rasは単独でグリオーマ幹細胞の出現を惹起し得ることが示唆された。しかし、その形質転換にCD133蛋白の発現は伴っておらず、この結果はCD133分子がグリオーマ幹細胞の発生に必ずしも必要ない付随マーカーである可能性を示唆していた。(5)グリオーマ以外の腫瘍細胞においてもヒト大腸癌細胞Caco-2においてERK経路の阻害はside populationのサイズを有意に減少させた。以上の結果は、Ras/ERK/ETS経路がCD133の発現調節と並行してグリオーマ幹細胞の発生・維持に関与している可能性を示唆しており、脳腫瘍幹細胞の包括的な理解と治療法の開発に役立つものと考えられる。
|
Research Products
(2 results)