2009 Fiscal Year Annual Research Report
揮発性成分の析出・分別実験によるマグマの脱ガス機構の解明
Project/Area Number |
09J02559
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
吉村 俊平 Tohoku University, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | マグマ / 脱ガス / 地殻 |
Research Abstract |
地殻内部におけるマグマの移動現象は,ガスの発生・輸送様式によって制御される.したがって火山噴火などダイナミックな現象を理解するには,ガス発生を律速する拡散係数を決定する必要がある.そこで初年度は,マグマ性揮発成分の主成分であるが拡散係数がまだ断片的にしか決まっていないCO_2の化学拡散実験を行った.得られた拡散係数データは断片的に知られているCO_2トレーサー拡散係数と調和的であった.現在更に高精度のデータを得るため,実験を継続している.また実験を繰り返すうちに,マグマ学の分野では知られてこなかつた新しい過程を見出した.すなわち,H_2Oに飽和したメルトにCO2を少量(数100PPm)溶解させると,代わりに多量のH_2O(数wt%)が析出するのである.このことは,マグマにCO_2が導入される場合,多量のH_2Oガスが析出することを示唆する.例えば,地殻浅部のH_2Oに富むマグマにCO_2に富む玄武岩質マグマが注入する場合,マグマ間でH_2O-CO_2の化学交換が起こり,多量のH_2Oが析出して気相分率が増加し,噴火を引き起こす可能性が考えられる.この予測は,多くの火山で噴火の直前にCO_2が供給されていることとも調和的である.以上のことは,火山学的・岩石学的に極めて重要な内容なので,まずこれを論文しようと考えた.現在Chemical Geologyに投稿し,査読中である.また近年,深部由来のCO_2が浅部マグマの内部を反応輸送されるCO_2フラクシングという現象が一般的に起きていると提案されている.この現象では先に述べたH_2O-CO_2化学交換がマグマ全体でおきていると考えられるが,その実態にアプローチした研究はない.そこで計算機シミュレーションによってCO_2フラクシングを再現し,その基本的性質を明らかにした.この内容はAGUFallMeetingの招待講演となった.現在,国際誌に投稿準備中である.
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