2011 Fiscal Year Annual Research Report
再話による口頭説明が英文読解プロセスに与える効果の研究
Project/Area Number |
09J02697
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
甲斐 あかり 筑波大学, 大学院・人文社会科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 英語教育 / リーディング / 再話 |
Research Abstract |
本研究の目的は、日本人英語学習者を対象に再話(読解後にその内容を人に語る言語活動)が英文読解をどのように促進するのか、そのメカニズムを解明するとともに、再話で産出される情報を検証し、再話課題の性質を明らかにするものである。特に、再話が持つ3つの認知機能(a)明確化機能、(b)客体化機能、(c)理解モニター促進機能を定義し、異なる表象レベル(テキストベース・状況モデル)の観点から各機能が表象形成に与える影響について精査した。 23年度の研究では、(c)理解モニター促進機能の観点から再話課題と2つのポスト・リーディングタスク(筆記再生課題・要約課題)の比較を行い、再話課題が読み手の理解とメタ認知(自己の認知活動を客体化して、それらを評価し制御する働き)に与える影響を検証した。協力者70名に対して実験を行った結果、読解に与えるプラスの効果は筆記再生課題よりも再話課題の方が高く、再話課題と要約課題がほぼ同等であることが示された。再話課題と要約課題では、テキストの内容を自分のことばでまとめるという点が共通しており、この点が読解を促進したものと考えられる。一方、筆記再生課題は、できるだけ多くの内容を記憶するということに焦点があてられてしまったため、学習者が注意力を効率よく配分することができなかった可能性がある。 一連の研究の結果から、読み手はタスクによって読みの目標を設定し、それが構築される表象の一貫性の保持に対して影響することが分かった。再話課題を目標に行った読解において、構築される表象は通常のものよりも精緻であり、読みのコントロールを普段よりも注意深く行い、読解の処理を深いレベルで行っていることが示唆された。
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