2009 Fiscal Year Annual Research Report
ToF-SIMSを用いた樹木細胞壁成分のケミカルマッピング
Project/Area Number |
09J05367
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
齋藤 香織 Nagoya University, 大学院・生命農学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 木材化学 / 質量分析 / 顕微分析 / リグニン / 多糖 / 無機イオン |
Research Abstract |
本研究の目的は、飛行時間型二次イオン質量分析(ToF-SIMS)を用いて、樹木細胞壁におけるリグニンや多糖などの細胞壁構成成分の分布と化学構造の関連を明らかにすることである。ToF-SIMSは、近年生体試料への適用が発展しているが、いまだ植物試料にはほとんど適用されていない。今回、樹木細胞壁の主要成分のひとつであるリグニンへのToF-SIMSの適用可能性を詳細に判定し、さらに、ToF-SIMSによってリグニンの不均一分布を明らかにすることを試みた。まず、広葉樹カエデのリグニン分析において、ToF-SIMSの結果と、別手法であるチオアシドリシス化学分解法の結果を比較した結果、連続した年輪における早材と晩材のシリンギル(S)とグアイアシル(G)の比(S/G比)の推移において、高い相関がみられた。これにより、ToF-SIMSの結果がより信頼性の高いものであることが示された。今後、木材特性の迅速な評価や、木質バイオマスにおけるリグニン除去後の評価に、ToF-SIMSが貢献することが期待される。また、カエデにおける連続した4つの年輪において、グアイアシルとシリンギルリグニンのToF-SIMS分布可視化の結果、木繊維については、早材のS/G比はどの部位もほぼ一定でシリンギルリッチであったのに対し、晩材のS/G比は低く、グアイアシルリッチであることが示された。さらに、ToF-SIMSとチオアシドリシスによるリグニン濃度解析の結果から、晩材においてはSリグニンが激減することが原因で、見かけ上グアイアシルリグニンリッチであることが示唆された。これに対し、道管の分布では、晩材と早材で重要な相違はなかった。以上により、ToF-SIMSによって、より詳細なリグニンの分布が顕微的に得られることが示された。
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Research Products
(3 results)