2009 Fiscal Year Annual Research Report
時間依存密度汎関数法を用いた非断熱遷移を伴う化学反応のシミュレーション
Project/Area Number |
09J05478
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平井 宏俊 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 時間依存密度汎関数法 / 非断熱遷移 / 電子励起 / 分子動力学 |
Research Abstract |
これまで時間依存密度汎関数法の枠組みで、原子核・電子の非断熱分子動力学計算を行う手法およびプログラムを開発してきた。これまでは比較的に小さな分子系においてベンチマークテストを行ってきたが、本年度はこの手法をバルクやクラスターなどの系に応用した。まず、シリコン中の水素拡散の問題に取り組んだ。シリコン中の水素原子は水素の位置によって水素の電子状態が変わることが知られており、その拡散過程で非断熱な効果が期待される。実際に計算してみると異なる電子状態のポテンシャル面が交差することが確認できた。しかしながら、水素のレベルがシリコンのギャップ中にあるときは現在の手法が正当化できるが伝導帯中にあるときは、電子レベルが連続的になるため取り扱いが困難であることがわかった。金属の系など電子レベルが連続的な場合の非断熱過程の取り扱いも本年度のテーマの一つであったが、現在の計算機の能力ではエーレンフェスト法以外によい方法が無いという結論に達した。しかし、連続レベルの取り扱いにはまだ困難があることがわかった。それは実際の計算で取り扱える電子数が有限個のため、現実の系に見られる電子励起による散逸の効果をうまく表せず、原子の運動の緩和を正しく表現できないということである。この問題の解決には電子状態に散逸を取り入れればよいことに注目し、次年度のテーマでもある散逸を伴った非断熱ダイナミクスの手法の開発に取り組んだ。その結果、非線形シュレーディンガー方程式などの非線形項によって散逸を取り入れる手法を時間依存密度汎関数法に拡張することによって、有限サイズ効果を回避したシミュレーションが可能になった。次年度は、この研究を続けると同時に、光触媒反応などのより複雑な問題にも取り組んでいく。
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Research Products
(2 results)