2009 Fiscal Year Annual Research Report
現代の在日朝鮮人当事者運動の実証的研究―アイデンティティ論の再構成へ―
Project/Area Number |
09J05737
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
片田 晶 (孫 晶) Kyoto University, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 在日朝鮮人 / エスニシティ / マイノリティ / アイデンティティ / 差別 / 社会運動 |
Research Abstract |
本研究は、日本の民族的マイノリティである在日朝鮮人について、現在の若者世代である3世世代のアイデンティティの特徴と、その当事者運動(社会運動)との関係を明らかにする。これにより、戦後日本にとって重要な民族的「他者」である在日朝鮮人の世代変容と現在世代のアイデンティティの状況を明らかにし、今も残る差別的関係の克服と真の「多文化共生社会」の模索に寄与することを目指している。この作業はまた、従来の本質主義的なアイデンティティの「脱構築」の流れの中、抑圧への抵抗の主体としての「われわれ」という分節の構築がいっそう困難な課題となった、現在の多くのマイノリティ集団も直面している問題の解明でもある。 今年度は、第一に、在日朝鮮人3世らの若者たちが集う民族運動の団体への事例調査を進めた。在日朝鮮人の若者たちの民族運動には複数の歴史的系譜が存在するが、本研究では特に3世世代において、韓国の「民主化」を核としていた祖国志向の運動の挫折と変遷以後、日本社会に生きる「在日朝鮮人」としての特徴的なアイデンティティ実践を築いた学生団体、青年団体に注目し、これらの団体の活動に参与し、機関誌等の言説の分析を行った。第二に、これら現在の運動の意義を明らかにする視角のひとつとして、対「差別」の文脈を考察する必要性から、就職活動を行った在日の若者たちのうち、民族団体への参加者と非参加者の双方の事例の収集に着手した。本年度は計12名の就職活動経験者に聞き取り調査を行い、若者たちの日本企業に対するアイデンティティの提示とコミュニケーションの様相の中に、現在世代のアイデンティティの状況、また民族運動経験の影響を考察した。 予算の限界から、本年度に当初予定していた韓国での調査は実現できなかったが、就職活動調査の中で留学経験を持つ若者への聞き取り調査を行なったことで、代替的な分析をすることができた。
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Research Products
(2 results)