2009 Fiscal Year Annual Research Report
真社会性アブラムシ-捕食者系における相互対抗的な表現型可塑性の実験生態学的検証
Project/Area Number |
09J06649
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
服部 充 Shinshu University, 理学部, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 表現型可塑性 / 誘導防御戦略 / 生物間相互作用 / 真社会性アブラムシ |
Research Abstract |
本研究の目的は、被食者である真社会性アブラムシと捕食者のもつ相互対抗的な表現型可塑性の実態を明らかにすることである。そこで、今年度は被食者である真社会性アブラムシのもつ表現型可塑性に注目して研究を行ってきた。まず、材料である真社会性アブラムシのササコナフキツノアブラムシの室内実験系の確立を目指した。これは、表現型可塑性を検証する上で、生物の環境に対する反応を見ることは必須であるため、人為的に環境を操作して実験を行うことが重要であるからである。そこで、私はササコナフキツノアブラムシの寄主であるクマイザサの鉢植えを用いることで、室内実験系の確立に成功した。 この室内実験系を用いて、これまで真社会性アブラムシの表現型可塑性として注目ざれてこなかった、兵隊の形態形質に注目した温度操作実験を行った。まず、15℃、20℃、25℃に設定した恒温庫内でササコナフキツノアブラムシを飼育した。その結果、母虫が周囲の温度によって異なった形態をもった兵隊を産んでいることがわかってきた。具体的には、20℃に設定ざれた環境で産まれた兵隊ほど長い角や前脚を持っていることがわかってきた。ざらに、野外観察により兵隊は捕食者からの防衛に用いる角や前脚が長い個体ほどより攻撃的であることがわかっている。つまり、ササコナフキツノアブラムシは周囲の環境に応じて、兵隊の「質」を表現型可塑性により変異させている可能性が高いことがわかった。さらに、野外観察から捕食者が夏に集中的に発生することがわかっている。このことから、ササコナフキツノアブラムシの温度依存的な兵隊の「質」を変異させる表現型可塑性が、誘導防御戦略である可能性が高いことがわかった。
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Research Products
(6 results)