2010 Fiscal Year Annual Research Report
真社会性アブラムシ‐捕食者系における相互対抗的な表現型可塑性の実験生態学的検証
Project/Area Number |
09J06649
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
服部 充 信州大学, 理学部, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 表現型可塑性 / 誘導防御 / 捕食者-被食者系 / 真社会性 / 兵隊アブラムシ |
Research Abstract |
本研究の目的は、被食者である真社会性アブラムシとその捕食者がもつ相互対抗的な表現型可塑性の実態を明らかにすることである。そこで、今年度は被食者である真社会性アブラムシのもつ表現型可塑性に注目して研究を行ってきた。私は、研究材料であるササコナフキツノアブラムシが、物理刺激に対して角状管(腹部にある外分泌器官)から放出する液滴に注目し、様々な操作実験を行った。角状管から放出される液滴は、アブラムシ一般において警報フェロモンであることが知られている。そこで、ササコナフキツノアブラムシが放出する液滴も警報フェロモンではないかと予測し、液滴が捕食者との接触時に放出されること、液滴が生殖をおこなう個体には、逃避行動を誘導すること、防衛を行う兵隊個体には攻撃行動を誘導することを確かめた。さらに、実際に捕食者に対して機能するかどうかを確かめ、液滴が塗布された捕食者は、液滴が塗布されていない捕食者に比べ兵隊個体に攻撃されないことを明らかにした。これらの結果から、ササコナフキツノアブラムシにおいても角状管から放出される液滴が警報フェロモンとしての機能を持つことが示唆された。これまで、他の社会性昆虫に比べ社会性アブラムシにおいて化学コミュニケーションに注目した研究は少なく、本研究は社会性アブラムシが、他の社会性昆虫と同様に化学コミュニケーションをもちいて適応的にふるまうことを示した数少ない研究例になると考えられる。 さらに、ササコナフキツノアブラムシにおいて警報フェロモンを若齢個体はほとんど放出しないことも明らかにした。これは、若齢個体が角状管を欠くためであることを発見した、これは発生学的ににも非常に興味深い。
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Research Products
(4 results)