2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J08340
|
Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
小坂井 千夏 Tokyo University of Agriculture and Technology, 大学院・連合農学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | ツキノワグマ / 堅果 / GPSテレメトリー / 行動圏利用 / 出没 / 野生動物 |
Research Abstract |
1.ツキノワグマの人里への出没が問題となっており、食物資源の変動(特に堅果類の不作)がその要因として挙げられてきた。堅果類などの食物不足時に行動圏面積が拡大することが知られているが、行動圏の内部をどのように利用して面積の拡大が起こり、どのように出没に結びつくのか、そのメカニズムは不明であった。 2.そこでまずは「堅果類の結実レベルが異なる年次間で、ツキノワグマ土地利用様式の比較」を行うことを目的として、A.ツキノワグマにGPS首輪を装着追跡して行動圏内部の利用形態を評価し、あわせて、B.調査地全体をカバーするように堅果類の結実レベルを定量的に評価した。 3.この結果、以下のことが分かった。 (1)ツキノワグマは行動する範囲を大きく拡大させた不作年であっても、その広大な行動圏を均一に利用している訳ではなかった。あるエリアを集中的に利用しており、そのエリア間の距離が長くなること、また豊作年よりも低標高地域を多く利用していたことで行動圏が拡大していた。 (2)(1)のような行動圏の利用様式は、堅果類の水平かつ垂直的な分布状態(主要樹種であるミズナラは、不作年であってもパッチ状にわずかにならば結実している場所があること、低標高には毎年コンスタントに結実するコナラ、クリが生育していること)とよく一致していた。 4.すなわち、ツキノワグマは不作年においても「広いエリアの中で局所的にわずかに存在する食物資源を見つけ出せる」ことができ、これが出没に影響している可能性が考えられた。 5.本研究は、行動圏拡大のメカニズムを、堅果類の空間的な分布状況と合わせて定量的に検証した初の研究である。堅果類の結実状況は毎年変化し、今後も長期的にデータを蓄積していく必要があるが、断片的な情報に留まっていたツキノワグマの生態研究にとってのブレークスルーとなると考える。
|
Research Products
(1 results)