2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J08453
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
田中 壮泰 立命館大学, 先端総合学術研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 文化 / サブカルチャー / 比較文学 / 介護 / 福祉 / 労働 / 精神分析 / ポーランド |
Research Abstract |
本研究はブルーノ・シュルツの提唱した「サブカルチャー」(podkultura)の概念を作品研究と照らし合わせながら考察するものであるが、本年度(10年)はシュルツが翻訳し、ポーランドに紹介したチェコの作家フランツ・カフカの比較文学研究を通じて、戦間期東欧における「文化」概念が持つ幅の広さと多面性を考察した。そこから理解されるのは、シュルツが同時代の文化状況に見出していた「サブカルチャー」は、現在流通しているそれとは別のものと考えねばならないことである。というのも高級文化と対置される下位文化は商品文化、複製文化のような狭い意味での物質的な対象だけに留まらず、たとえば「子どもの文化」、「未開の文化」などといった、物質的というよりは精神的と言った方がよいような、より広い対象をも指すからである。カフカにおいても、文化とは労働や福祉、医療といった人間の生の営みと密接に結びついていた。第一、シュルツ自身、商品の流通、生産、消費とは別の人間の営みと関わるものとして「文化」概念を使っている(「フェルディドゥルケ論」)。そこにはフロイトの精神分析の影響も大きく関与している。本年はカフカとシュルツを論じながら、狭い意味で「介護」をテーマに考察してきたが、現在は、同時代のフロイトがそうであったように、「臨床」から「文化」へと結びつける広い視野で、両作家の作品の読み直しに取り組んでいる。
|
Research Products
(3 results)