2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J09641
|
Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
伴戸 寛徳 国立大学法人帯広畜産大学, 原虫病研究センター, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 中腸内共生微生物 / マラリア / ハマダラカ / セラチア菌 / flhDC |
Research Abstract |
吸血性媒介節足動物である蚊の中腸内において、マラリア原虫の分化・増殖を抑制することが可能な、新規中腸内微生物の探索を目的とし、実験室系統とマラリア流行地域である西アフリカ・ブルキナファソ国のハマダラカ中腸内からそれぞれ腸内細菌を分離した。その結果、実験室系統の蚊とマラリア流行地域の蚊の中腸に共通してSerratia marcescesn(セラチア菌)が存在することを明らかにした。次に、実験室系統の蚊から分離されたセラチア菌HB3株とHB18株、そしてマラリア流行地域の蚊の中腸から分離された3-F株を用いて、それぞれの菌株とマラリア原虫を蚊の中腸内に共感染させ、オーシスト形成数を比較した。その結果、HB3株と3-F株は、有意に原虫数を減少させることが明らかとなった。また、HB18株はマラリア原虫に全く影響を与えない事も明らかとなった。これらの成果は、節足動物により病原体伝播を制御する事が可能な新しいコンセプトの生菌剤開発に大きく貢献するものである。 次に、セラチア菌による抗マラリア原虫生体応答の詳細なメカニズムの解明を目指し、生体応答が異なるセラチア3菌株(HB3株・HB18株・3-F株)の生化学的性状の比較を行なった。その結果、抗マラリア原虫生体応答と、菌の細胞サイズ・保有鞭毛数に相関関係があることを見いだした。さらに、マラリア非抑制株であるHB18株では、これらの形質を制御するflhDC遺伝子のプロモーター領域に存在する転写開始領域に起こった2塩基の挿入が原因となり、flhDCのmRNA発現量が極めて低くなっていることを明らかとした。これらの成果は、蚊の腸内に存在する細菌の意義の理解や、マラリア流行地域での感染症と腸内細菌の相互作用、自然界におけるマラリアと蚊の共生関係を理解する上でも重要な知見である。
|
Research Products
(1 results)