2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J40042
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
木下 朋子 Keio University, 理工学部, 特別研究員(RPD)
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Keywords | 量子化学 / 分子軌道法 / 密度行列 / 共役分子 |
Research Abstract |
量子化学計算は、既知の分子の性質や未知の分子の探索のための強力なツールとなって久しい。しかしながら、機能性分子候補の多くは共役分子であり、複雑な電子状態を表現するには膨大な基底関数を必要とすることがボトルネックとなり、これらの分子を解析するための量子化学手法は未だ確立されていないのが現状である。そこで本研究では、新規材料物質探索の新手法として確立することを目的とし、計算精度を保ちながらも、計算資源の軽減を可能とする、新規量子化学手法の開発を行っている。 本年度は、全系をいくつかのブロックに分けて、ひとつひとつの計算を軽減し、最後に全系の描像を再構築する近似法を開発している。特に、双極子モーメントや、電荷密度などの分子解析に重要な物理量を求めるための情報である、密度行列を精度よく求めることに焦点をあてており、疎を課したハートリーフォック(Sparsity lmposed Hartree Fock : SIHF)法として開発を進めている。現在数値特性を考察している段階であるが、典型的な共役分子であるアセン系列やフラーレンに対しして、数kcal/molの精度で近似することができることを示した。しかしながら必要とする計算資源の軽減という目的にはまだ達成したとは言い難く、近似レベルを下げると精度の劣化が見られる。系の大きさに相当する量であるNに対して、オーダーN法と言われる、分子の大きさに比例して計算資源が増える手法(一般的な手法ではオーダーN^3炉以上)に近づくため、全系の物理量を精度よく再構築する手法について検討中である。
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