2009 Fiscal Year Annual Research Report
tRNAに対する修飾の導入順序を制御する機構に関する構造生物学的研究
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09J40190
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 桜子 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(RPD)
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Keywords | tRNA / X線結晶構造解析 / 修飾塩基 / 立体構造 / タンパク質 / 翻訳 |
Research Abstract |
本年度初めに、本研究において着目しているtRNA修飾酵素Trm5のN末ドメインD1が、超好熱古細菌M.jannaschiiの生育温度付近では、活性を大きく上昇させる効果を持つことを見出した。続いて、変異体を用いた実験により、D1とL字型tRNAの角G19:C56との相互作用が、aTrm5の活性に重要であることがわかった。また、野生型や変異体のtRNAやaTrm5の反応速度定数K_m、K_<cat>を測定し、tRNA G19:C56とD1の残基が相互作用することがtRNAとaTrm5の親和性を強める(K_m値を下降させる)ために重要であることを見出した。更に、tRNAの立体構造を安定化させるために必要だと考えられている修飾とaTrm5の反応との関連性を調べた。初めに、tRNA内部の立体構造を安定化するための修飾を行う酵素ArcTGTが存在するとaTrm5の活性が落ちることがわかった。また、C56の糖2'-OHをメチル化する酵素であるaTrm56によってC56の2'-OHをメチル化したtRNAを用意して、未修飾tRNA転写産物と活性を比較したところ、活性に差は見出せなかった。また、aTrm5とtRNAとの複合体立体構造においては、C56の2'-OHの先にメチル基が入る空間が存在することがわかった。今回の研究から、成熟tRNAを作り出す過程においては、tRNAのL字型立体構造が確立していることを確認した上で機能する酵素(aTrm5)が存在することが明らかになった。この知見をもとに、tRNA成熟化過程においては複数の"3次構造のチェックポイント"となる酵素が存在しており、各tRNAは成熟化過程のどこかでそのチェックを受けた上で翻訳プロセスへと送り出されるという機構が存在しているのではないだろうかということを、初めて提唱するに至った。
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Research Products
(3 results)