2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J55132
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中西 俊英 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 中国仏教 / 華厳宗 / 法蔵 / 慧苑 / 澄觀 / 事事無礙 / 大乗起信論 |
Research Abstract |
今年度は、修士課程においてのテーマであった中国華厳宗の文献研究を継続し、特に第三祖法蔵(643-712)、彼の弟子の慧苑(673?-743?)、第四祖澄観(738-839)の思想を中心に研究し、その成果を論文として発表した。 まず、2009年9月に大谷大学にて開催された日本印度学仏教学会での口頭発表では、静法寺慧苑に関しての研究成果を発表し、それに基づいた論文が<Jouurnal of Indian and Buddhist Studies Vol.58-3に掲載された。この発表および論文においては、中国華厳宗の異端児として位置づけられ、あまり研究されることのなかった慧苑の『續華嚴略疏刊定記』を主なテキストとして用い、まず(1)彼の思想の中でもとりわけ独自性の見られる二種十玄説を師である法蔵の十玄説と比較しつつ説明し、次に(2)その二種十玄説の背景には、当時思想的ブームとなりつつあった『大乗起信論』の影響が濃厚にみられることを指摘した。 次に、中国華厳宗の人々の思想に関しては、『インド哲学仏教学研究』第17号において発表した。この論文では、中国華厳宗を代表する思想である「事事無礙」説に焦点を合わせ、その思想が、インドから伝えられた『華嚴經』の思想と、「事」という目の前の現象を重視する中国的な思想とが交流する中で洗練され、唐代に花開くまでの過程を追った。そして、華厳宗の教学を大成したとされる法蔵や慧苑は「事事無礙」を至上としたわけではなく、その様な傾向は、後代の澄觀においてであり、さらに、そのような思想展開を踏まえてこそ、研究のすすんでいない著者不明の華厳観行文献の考察が可能になり、思想史的な位置づけも明らかになると指摘した。同時に、それらの華厳観行文献の一つである『華厳五教止観』を取りあげ、撰述年代に関して、従来よりも新しく、およそ730年から北宗が勢力を失うまでと指摘した。
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Research Products
(3 results)