Research Abstract |
前年度に引き続きヒト胃癌細胞株AZ-521を用い,肝臓に高率に転移する細胞株とリンパ節に高率に転移する細胞株AZ-H5cを樹立し,それぞれの細胞株の特性について検討したが,今回は同一親株を用いて脾臓内注入法により高率に肝転移を生ずるAZ-H7dを,腹腔内注入法により高率に腹膜播腫を生ずるAZ-P7aを樹立した。これらの細胞を用いて転移率,増殖能,接着能,接着分子のの発現,サイトカイン産生,病理組織像,DNA ploidy patternを検討した。またヒト膵臓細胞株HPC-3を用いて肝臓に高率に転移するHPC-3H4を樹立し,先に樹立した肝臓に高率に転移する細胞株AZ-H5cに対する血管新生抑制剤TNP-470の肝転移抑制効果を比較検討した。まず親株AZ-521と高転移株AZ-H7dおよびAZ-P7aとの実験成績に関してであるが,(1)in vitroでの増殖能のみ親株が優れ,in vivoの増殖能,転移率,運動能は転移株が優れいた。(2)親株,転移株共にcollagen IV,fibronectinに対し高い接着能を呈した。(3)親株と比べAZ-H7dで,integrin α 1,2,5,6 β1,CD44v3,vl0が増強し,αvβ3が減弱していた。(4)親株は転移株に比べ,有意にVEGFの産生増加を認めた。病理組織像,DNA ploidy patternは3つの細胞株間で変化を認めなかった。一方AZ-5HcとHPC-3H4に対するTNP-470の肝転移抑制に関してであるが,AZ-5Hcに対しTNP-470は用量依存性に肝転移を抑制し,30mg/kgで完全に肝転移を抑制しえた。HPC-3H4に対し,TNP-470単独投与では転移抑制効果を認めないがCDDPとの併用により肝転移抑制効果を認めた。今後腹膜播腫株に対しても同様の実験を行い,転移機序を明らかにすると同時に,臨床応用したい。
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