1998 Fiscal Year Annual Research Report
ショウジョウバエの生殖細胞形成におけるNanos蛋白質の役割
Project/Area Number |
10780456
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
浅岡 美穂 筑波大学, 生物科学系, 助手 (90292507)
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Keywords | ショウジョウバエ / 生殖細胞 / Nanos / Ftz-F1 / Cyclin B / 翻訳制御 / 極細胞 |
Research Abstract |
(1)Ftz-F1蛋白質を強制発現させた極細胞の発生運命を調べる試み 生殖細胞形成因子の1つであるNanos蛋白質は、極細胞中でFtz-F1蛋白質の発現を抑制している事が明らかになっている。極細胞中でFtz-F1蛋白質の発現が抑制される事が極細胞の分化に必要であるか否かを調べるため、以下の実験を行った。hsp70遺伝子のpromoterの下流にftz-f1遺伝子のcoding regionを繋いだ融合DNAをゲノムに導入したトランスジェニックバエの卵を発生させ、胚発生過程の様々なステージでheat shock処理によりftz-f1遺伝子を強制発現させた。そのような胚を成虫になるまで発生させた後、生殖巣の形態を調べた。極細胞が生殖巣に入った後のステージでは、Ftz-F1蛋白質を発現させても、極細胞は正常に分化する事が明らかになった。しかしながら、生殖巣へ移動途中の極細胞中では、heat shockによりFtz-F1蛋白質の発現が十分に誘導できないため、Ftz-F1蛋白質の発現が極細胞の分化を阻害するか否かを調べる事ができなかった。現在、移動過程の極細胞中でFtz-F1蛋白質を効率良く発現させるため、hsp70プロモーターの代わりにnanos遺伝子のpromoterと3'UTRを用いて同様の実験を行っている。 (2) Cyclin B蛋白質を強制発現させた極細胞の発生運命 Ftz-F1蛋白質と同様に、Cyclin B蛋白質の発現はNanos蛋白質により極細胞中で抑制されている事が明らかになっている。(1)と同様なnanos遺伝子のpromoterと3'UTRを用いた強制発現系により、Cyclin B蛋白質の発現を移動過程の極細胞中で誘導した。その結果、Cyclin B蛋白質の発現を誘導した極細胞は、Nanos蛋白質を欠く極細胞と同様に、移動過程でprematurelyに分裂を開始した。これにより、正常発生過程では、Nanos蛋白質はCyclin B蛋白質の発現を抑制する事により極細胞の分裂を移動過程で抑制している事が明らかになった。
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