2010 Fiscal Year Annual Research Report
ギブスの統計力学に関する研究――物理化学史の観点から――
Project/Area Number |
10J01854
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
稲葉 肇 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 科学史 / 物理学史 / 統計力学 / ギブス / ボルツマン / マクスウェル / ヘルムホルツ |
Research Abstract |
本研究では,19世紀後半におけるアンサンブル概念に基づく統計力学の発展を,物理化学の発展と結びつけて理解することを目指している.本年度は,先行研究の消化およびアンサンブル概念に基づく統計力学の発展過程を追うことを予定していた,これについては,学会発表「ボルツマンとギブスのアンサンブル概念について」および研究ノート「アンサンブル概念の起源をめぐって」において成果を既に公表している.アンサンブル概念の起源はマクスウェルにあり,それがポルツマンへと引き継がれ,最終的にギブスがそれを完成させた,という従来の描像は単純に過ぎ,マクスウェルとは別に,ヘルムホルツの「単循環系」なる力学的な系の考察がボルツマンのアンサンブル概念に大きく影響している,というのがその具体的な内容である。これは,ギブスのアンサンブル概念に基づく統計力学の歴史的位置付けを考える上で効いてくる事実であると思われるため,来年度の研究の基礎をなす成果であると言える.また,イェール大学Beinecke Rare Book & Manuscript Libraryに所蔵されているギブスの手稿調査も予定通り実施した.2月末に実施したこともあり,現在はなお分析の最中であるが,その成果は出来るだけ早く公表したいと考えている.その他,来年度にむけての準備として,物理化学と統計力学の関係に関する研究を進めており,当初の研究計画通りに,その関係が浅からぬものであることが判明しつつある.これについても,既に成果をいくつかの機会で発表しているが,統計力学に加え,気体分子運動論の展開も考慮に入れる必要が出てきたため,本研究で調査の対象とする分野を若干広げることとした.このことは,しかし,十全な歴史像を得るためには不可欠の選択であると考えている.
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Research Products
(4 results)