2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11720051
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
眞壁 仁 東京都立大学, 法学部, 助手 (30311898)
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Keywords | 昌平黌 / 古賀精里 / 古賀〓庵 / 古賀茶溪 |
Research Abstract |
昌平黌儒者古賀家三代の関連文書は、未整理史料も多く全国に散在しており、史料探訪・蒐集・整理、目録作成などの、思想分析の基盤となる書誌研究に多大な労力を払わざるを得ない。そのために、今年度は多くの関係諸氏にご協力頂いて、まず、焦点を絞った上で各史料所蔵機関を調査し、マイクロフィルムによる複写・整理・史料解読を行った。その機関とは、(1)昨年度から引き続き古賀家三代-精里・〓庵・茶溪-の著作を収集するため、慶応義塾大学附属研究所斯道文庫・宮内庁書陵部「古賀本」、早稲田大学中央図書館特別資料室・東北大学狩野文庫、(2)林家と他の昌平黌儒者たち-柴野栗山・頼春水ら-の史料調査のため、国立公文書館内閣文庫・東京大学史料編纂所・広島市立中央図書館浅野文庫・洲本市立図書館・徳島県立図書館阿波国文庫、(3)古賀家と関係をもった佐賀藩校弘道館の儒者たち、とりわけ草場珮川・船山の著作を確認するため、多久市郷土資料館に寄託された草場家文書、(4)昌平黌の学問吟味及第者の政策提言を調査するため、特に東京大学史料編纂所所蔵「維新史料稿本」などである。つぎに、これらの調査に基づいて、寛政以降の昌平黌儒者による漢籍を介した海外情報の収集、漂着した唐船への勧告書起草、外交文書起草など書きことば漢文を用いた外交、幕臣たち-特に学問吟味及第者-によるペリー来航の際の上申書、そして対外交渉日記の比較を通して、彼らの外交の具体的な経験やその対外観を含む思想を分析検討した。その結果、徳川後期の日本社会において、広義の東アジア外交に果たした昌平黌儒者の政治的役割とその思想が明らかになった。この成果は、書誌研究を踏まえた古賀家三代としては初の包括研究となる、現在執筆中の論文「徳川後期の学問と政治-昌平黌儒者古賀家三代の系譜」(仮称)に盛り込まれ、近く発表する予定である。
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