2011 Fiscal Year Annual Research Report
インドの教育制度における『影の制度』に関する研究―無認可学校の機能と役割の検討
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11J07898
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
伊藤 優貴 (小原 優貴) 早稲田大学, アジア太平洋研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | インド / 高等教育 / 無認可大学 / 教育の私事化 / 教育の国際化 / 教育の国際化 / 比較教育学 |
Research Abstract |
インドにおける無認可の高等教育機関(政府から認可されておらず、それゆえ学位授与権を持たない教育機関)の機能と役割を解明するため、本年度はその中でもとくに外国の教育機関と提携する機関について調査をおこなった。本研究では国立教育政策行政大学(NUEPA)のBhushan教授に対する聞き取り調査および研究代表者による現地調査などの結果から、これらの無認可の教育機関は外国での学位授与権を持つ教育機関との提携によって、学位授与を実現していることを確認した。またインドでは高等教育の需要の高まりと多様化にともない民間の高等教育機開が拡大する一方、これらの教育機関に対して政府が適切な統制を行ってこなかったため、無認可の教育機関が発展してきたことを明らかにした。現地調査では無認可の教育機関に在籍する学生とその保護者に対する聞き取り調査を実施し、学生・保護者らは無認可の教育機関がこれまで政府の認可なしでも発展してきたという現状認識のもと、高等教育機関の教育の質は必ずしも認可の有無に左右されないと判断していることを確認した。外国の教育機関との提携によって学位授与を実現する無認可の教育機関は、グローバル化と急速な経済成長を背景に高等教育の量的拡大とその私事化・国際化が進むインドの教育動向を象徴するものであり、その実態解明は本研究のサブ・テーマでもあるインド政府の統制システムと教育の質保証の問題の解明にも貢献するものである。無認可の高等教育機関はアメリカやバングラデシュにも存在しており、本研究の成果は、これらの国の実態との比較によってインドの高等教育制度の特徴をより明確に理解するのにも役立つと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現地調査の時間を十分に取ることが出来ず、無認可の教育機関のうち工学系の大学とニセ大学の調査、および保護者に対する質問紙調査を実施することが出来なかったが、先行研究の分析と現地調査によって無認可の教育機関が発展する基本的原理について理解を深めることが出来たため。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、現地の研究者や大学関係者らの協力を得て、インドの無認可の教育機関の実態解明に努める。ニセ大学に関しては調査協力を得ることが困難であることが想定されるが、大学関係者等の協力を得て情報収集に努める。
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