2012 Fiscal Year Annual Research Report
インドの教育制度における『影の制度』に関する研究-無認可学校の機能と役割の検討
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11J07898
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
伊藤 優貴 (小原 優貴) 早稲田大学, アジア太平洋研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | インド / 高等教育 / 無認可大学 / 教育の私事化 / 教育の国際化 / 教育の国際化 / 比較教育学 |
Research Abstract |
本年度は、まず、研究課題の構想の基礎となった博士論文「インドの初中等教育における『影の制度』一デリーの無認可学校の正当性の研究」を完成させ、その成果の一部をOxford Studies in Comparative Education(7.研究発表、2)で発表した。また、2月26日~3月5日にかけてデリーを訪問し、インドの高等教育の専門家である国立教育経営大学のSudanshu Bushan教授および工学系・経営学系教育機関への進学支援をおこなう大手教育企業のスタッフに研究課題に関する聞き取り調査をおこなった。その結果、外国の教育機関が提供する無認可の教育プログラムの展望は、2014年の選挙で新たな教育省大臣が選出され、「外国大学法案」が国会で改めて審議されるまで明らかではないことが分かった。また無認可大学の中には、学生や保護者から支持を得る一方、運営の適正性をめぐって何十件もの係争案件を抱えているような大学もあり、高等教育の商業化や質保証のあり方を危惧してこれらの大学に批判的見解を持つ者もいることが明らかとなった。本年度はさらに、インドの就学前教育に関する論文(7研究発表、6)を執筆し、無認可の教育機関が当該教育段階にも多くみられることを確認した。これらの結果から、インドでは、就学前教育から高等教育段階に至るまで、政府の統制を受けない教育機関が『影の制度』として、教育の拡大と多様化を押し進めていることが分かった。また『影の制度』は、急速な経済発展が進む中、国際競争を視野に入れて教育の正規化を図ろうとするインドの葛藤や矛盾を象徴する制度であるという理解に至った。以上の研究成果は、インドにおける『影の制度』の位置づけや役割を理解するのに役立つ貴重な研究成果であるといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題の構想の基礎となった博士論文の執筆と修正、インドでの現地調査、そして就学前教育に関する論文執筆を通じて、非正規の教育施設が就学前教育から高等教育段階に至るまで存在することを確認し、インドの教育制度における『影の制度』の位置づけや役割、重要性について理解を深めることが出来たため。
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Strategy for Future Research Activity |
『影の制度』の位置づけや役割について理解をより深めるため、今後は(1)認可された教育機関、(2)無認可の教育機関の卒業生を雇用する企業、(3)インドの無認可の教育機関と提携する外国の高等教育機関を訪問し、調査をおこなう。また就学前教育段階の無認可の教育機関に対する統制の動向を調査し、高等教育段階のそれとの比較検討をおこなう。
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