2011 Fiscal Year Annual Research Report
ゲノム機能解析による鳥類血液原虫の感染制御へ向けた基盤研究
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11J08180
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
井村 貴之 日本大学, 獣医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | Leucocytozoon / アピコプラスト / PBGS / ゲノム / ヘム合成系 / ワクチン |
Research Abstract |
原虫感染防除のためには、病原体の生理機構を解明し、薬剤およびワクチンの有効なターゲットとなる原虫特異的な代謝機構やタンパクなどの関連分子を選択する必要がある。本年度はLeucocytonzoon caulleryiを対象として原虫特異的な各種ゲノム情報の収集を試みた。 これまでのところ、原虫特異的な代謝機構であるヘム合成系の調節に関わるPBGS遺伝子の存在および塩基配列を明らかにした。また、アピコンプレクス門原虫に特有なゲノムを持つ細胞小器官であるアピコプラストのゲノム解読に着手し、想定される35kbpのアピコプラストゲノムのほぼ全長を解読できた。アピコプラストゲノムにはSSUおよびLSU rRNA、25個のtRNA、17個のrRNA、tufA、clpC、sufB、6種のORFがそれぞれコードされており、遺伝子構成および配置は近縁種であるP.falciparumとほぼ同様であった。AT含量は約86%であり、多種のヒトおよびネズミマラリア原虫と比較して同様のゲノム構成であることが分かった。 さらに、上記ゲノム情報の保存性を比較解析するため、国内の野鳥においてLeucocytozoon属原虫の感染状況を調べたところ、522個体のうち98個体から43系統のLeucocytozoon sp.が得られた。なお、本研究結果は第152回日本獣医学会学術集会で発表し、さらに国際学術雑誌(veterinary parasitology)に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
原虫特異的なタンパク代謝経路に関わる重要遺伝子の存在が明らかとなり、また原虫の生存に必須なアピコプラストゲノム情報のほぼ全容を解明したため、原虫感染防御の標的となる有用遺伝子の基礎情報が蓄積された。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究から、原虫感染防御へ向けた基盤情報が収集された。今後はニワトリ肝細胞がん由来LMH細胞株を用いて、原虫の細胞侵入の有無や細胞内増殖の有無を観察する。発育が認められれば培養条件の最適化や凍結保存・解凍法の条件を検討してクローン化し、長期培養株の樹立を目指す。原虫の各発育期における発現遺伝子プロファイリングを行い、ステージ特異的発現遺伝子候補をリストアップする。また、培養系を用いて、近縁な原虫で構築されているGFPおよびlucをレポーター遺伝子とする一過性発現プラスミドを電気穿孔法にて原虫に導入し、発現レベルを検討することで、原虫への遺伝子導入条件およびプロモーターの最適化を行う。構築した遺伝子座改変システムを応用して、ゲノム情報・転写解析の結果に基づき、遺伝子改変弱毒生ワクチン作成の標的候補分子について、ニワトリ細胞侵入に果たす役割を解析する。細胞侵入を防御する可能性がある場合、遺伝子改変原虫を作製し、感染実験により宿主の感染防御誘導を試みる
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