2012 Fiscal Year Annual Research Report
真核ピコプランクトンの多様性の解明:分類学とゲノム生物学からのアプローチ
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11J08277
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
中山 春代 (山口 春代) 独立行政法人国立環境研究所, 生物・生態系環境研究センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | 真核ピコプランクトン / 系統分類学 / 次世代シークエンス / 18S rRNA gene |
Research Abstract |
真核ピコプランクトン採集のため、2012年5月8-16日に(独)水産総合研究所東北区水産研究所調査船若鷹丸に乗船し、親潮および親潮・黒潮混合域における2大測点(A4およびA21)において表層水を採水した。得られた海水からピコサイズの細胞を高濃度に回収するため、クロスフロー式濾過ユニットにより細胞濃縮し、船上で試料の凍結保存を行った。凍結保存細胞は下船後、実験室で解凍を行い、フローサイトメトリを用いてピコサイズの細胞が含まれるフラクションを解析した。フローサイトメトリによって解析した細胞をセルソーターで回収し、DNA解析用の分取細胞試料とした。また、2012年4月および7月の仙台湾から得られた表層水についても上記と同様に処理した後、DNA解析用の分取細胞試料とした。これらの4試料について、18S rDNAユニバーサルプライマーを用いて、約500bpのDNA断片を増幅させ、次世代シークエンス解析を行った。結果、昨年度行った黒潮周辺海域の解析結果同様、今回解析した親潮、親潮・黒潮混合域、仙台湾でも所属不明、正体不明のプランクトンが多く存在していることが判明した。フローサイトメトリでクロロフィル蛍光をもつ細胞を分取することにより、ピコ植物プランクトンの多様性を解析することが可能であることが判明したが、それ以上にピコ植物プランクトンを捕食していると思われる生物由来配列が大多数を占めるという結果になった。ピコ植物プランクトン同様に、その捕食者であるプランクトンも未知のものが多く、今後さらなる研究が必要である。 また、これらの海水を粗培養し、18の真核ピコプランクトンの新規培養株を確立した。これらの新規に作成された培養株の由来は様々であった。また、真核ピコプランクトンの中でも特に多様性が高いことが知られているハプト藻クリソクロムリナについても新規培養株を2株作成した。今後はさらに形態情報、分子情報を取得し、これらの新規培養株について分類学的研究を展開していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は黒潮周辺海域、今年度は親潮周辺海域および仙台湾における真核ピコプランクトンの多様性を把握することに成功した。また今年度も昨年度と同様、複数の真核ピコプランクトン培養株の確立に成功した。しかし,培養株の形態観察が遅れており,形態観察および分類学的考察をさらに深めていく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度得られた海水をフローサイトメトリを用いて、さまざまな解析を行った結果、ソーティング領域を変化させることによって、その多様性の度合いも極端に変化することがわかった。今後はソーティング領域をさらに工夫し、昨年度得られた凍結細胞試料をも再解析をするなどして、真の真核ピコプランクトンの多様性把握をする必要がある。
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