2011 Fiscal Year Annual Research Report
非晶質フッ素ポリマーを用いた1分子イメージングデバイスの開発
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11J09257
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小野 尭生 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ナノ・マイクロ加工 / 1分子イメージング / 非晶質フッ素ポリマー |
Research Abstract |
本年度は、1分子観察時のノイズを低減するため、水と整合した屈折率を持つ透明非晶質フッ素ポリマー(Cytop(旭硝子))を用いて、光の回折限界以下の直径のホールを備えたバイオデバイスである『ポリマーナノホールアレイ』を提案し、エバネッセント光とナノホールを用いた励起領域の三次元的局所化を試みた。デバイス材料と水との屈折率整合により、ガラス基板上で均一な全反射が可能になる。 まず、研究開始前に確立していた、アルゴン/酸素混合プラズマを用いた高異方性エッチング技術をベースに、μmスケールのホール径のデバイスを試作した。すると、プロセス由来のダメージが蛍光として観察された。プロセスの分析の結果、アルゴンプラズマがダメージの原因と判明し、エッチングの代わりにナノインプリントを用いてダメージフリーなプロセスを構築した。プラズマによるダメージを光学的に検出する方法論を示したものとして、この成果は意義深い。 上記の知見を基に、直径200nm、深さ200nmのナノホールをナノインプリント加工してデバイスを作製した。その結果、光の回折限界より小さなポリマーナノホールアレイ内でCy5修飾したシャペロニンGroEL1分子の蛍光を確認した。 以上まとめると、水とほぼ等価な屈折率を有する非晶質フッ素ポリマーについて、プロセスプラズマとの反応や生体分子との相互作用の理解に基づいて、バイオデバイス製造の基盤となるナノ・マイクロ加工技術を構築した。このプロセス技術を用いてポリマーナノホールアレイを開発した。本デバイスは、1分子レベルでの生体機能評価を通じ、基礎医学・生化学の発展に貢献すると考えられる。 なお、本年度の成果は、査読付き論文一報(他執筆中一報)、および筆頭著者としての国際学会発表二件(うち一件は国内開催)を含む計八件の学会において発表した。また、一件の学会発表に対して講演奨励賞が授与された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、デバイス用ポリマー材料のサブミクロン加工を実施し、非特異吸着を抑制する表面改質法などのプロセスとあわせて1分子観察用ポリマーナノホールアレイを開発し、デバイスを用いたたんぱく質の1分子イメージングに成功している。また、デバイス開発の過程で新たに判明した材料へのプロセス由来ダメージについてはユニークな知見を得ており、今後プラズマプロセスの評価などへの応用が期待される。 以上の研究結果を論文一報として発表したほか、国内外の学会において発表し、奨励賞も受賞している。よって、本年度の研究はおおむね順調に進展したと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、デバイスを用いて酵素反応を1分子レベルで可視化するため、観察領域への特異的なたんぱく質修飾やデバイス内部での蛍光共鳴エネルギー移動の観察を進める。並行して、既存の1分子イメージング法と比較してデバイスの性能を評価するため、ノイズ低減の効果の定量化、デバイス内の電磁界シミュレーションを進める。 研究を進める上で、デバイス表面へのたんぱく質の非特異吸着の抑制や、表面修飾に伴う自家蛍光性パーティクルの生成・付着などが課題として予想される。既存の1分子イメージング手法の開発過程で獲得されてきた知見を参照しつつ、デバイスへの応用に適した形の吸着抑制・表面修飾技術を確立する。
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Research Products
(10 results)