2012 Fiscal Year Annual Research Report
ナショナリティを軸とする公正な多文化共生の世界秩序に関する規範理論的研究
Project/Area Number |
11J09694
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
白川 俊介 青山学院大学, 国際政治経済学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | リベラル・ナショナリズム / 気候変動 / グローバルな貧困 / グローバル正義 / コスモポリタン民主主義 / ネイションの自決 / 土着語による政治 |
Research Abstract |
本研究の目的は、近年の政治理論において主要な潮流として台頭しつつある、リベラル・ナショナリズム論を批判的に継承し、国民国家体制を軸とする公正な多文化共生世界の構想を規範理論的な視座から提示することにある。 本年度は主に以下の3つのことを行った。まず、2012年2月に公刊した拙著『ナショナリズムの力―多文化共生世界の構想―』に関わる仕事である。主として、合評会や著書に関する対談、著書のエッセンスについての簡単な紹介文の執筆などである。多くの人々から拙論に対する率直な感想や批判を頂いた。 第2に、グローバル正義論に関する論考の執筆である。「グローバルな正義論と環境―公正な負担の配分をめぐる理論的一考察―」という論考は、気候変動が引き起こすグローバルな正義の問題に焦点をあてたものであり、困窮する他者を救う義務は誰にあるのか―グローバル正義論の見取り図―」という論考は、世界に広がる貧困問題に焦点を当てたものであり、両者ともに、それらにかかわる負担の公正な配分の原理について、規範的な考察を試みたものである。 第3に、デモクラシーとガヴァナンスに関する論考の執筆である。「グローバル・ガヴァナンスの制度構想に関する一考察―政治哲学的見地から―」および民主的シティズンシップの境界に関する理論的検討」の各報告では、ガヴァナンスの空間がグローバルに拡大するなかで、その正当性を担保するデモクラシーも空間的に拡大しうるのかを考察したものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、4つの原稿を執筆することができたからである。また、昨年度からの研究を1つ、本年度に行ったものを1つ、計2つの論文を発表することができたからである。
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Strategy for Future Research Activity |
おおむね計画通りに本研究は進んでおり、特に修正を施すつもりはない。 本年度に発表した原稿を論文として発表することがまずは優先される。 それに加えて、来年度は、「儒教の文化的伝統とりベラリズム」、「多文化主義の理論的再検討」「グローバル正義論の文脈からのカント的コスモポリタニズムの検討」「将来世代に対する義務の正当化論の検討」などの報告を順次行っていく予定である。
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Research Products
(7 results)