2013 Fiscal Year Annual Research Report
マウス発生工学的手法を用いた慢性関節リウマチ発症関連遺伝子の機能解析
Project/Area Number |
11J09956
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
矢部 力朗 東京理科大学, 生命医科学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 遺伝子改変マウス / 関節リウマチ / 自己免疫疾患 / C型レクチン |
Research Abstract |
関節リウマチ(RA)は、全身性関節炎を主体とする難治性自己免疫疾患の一つである。近年、マウスモデルを用いた病態解明が行われ、遺伝的背景や環境的背景など様々な発症要因が複雑に絡みあう疾患であることが解明されてきた。また、これらの結果をもとに、腫瘍壊死因子-α、インターロイキン-6など、炎症性サイトカインを標的とした生物製剤が開発され、RA患者に対する有効な治療手立てとして認められつつある。しかしながら、これら治療戦略はすべてのRA患者に対して有用ではなく、さらなるRA病態解明およびそれに準ずる治療薬の開発が求められている。我々はこれまでに疾患モデルマウスを用いたRA研究から、C型レクチン受容体(CLR)がRA病態形成に重要な役割を果たすことを明らかにしてきた。本研究では、CLRに焦点をあてRa病態形成機構を理解するため以下の2点について解析することを目的とした。(i)C型レクチン受容体DCIRの細胞制御に関わる糖鎖リガンドの同定 Dendritic cell immunoreceptor (DCIR)欠損マウスは、自己免疫疾患および骨代謝異常を示すが、これら病態形成に関与する細胞制御機構については未解明のままであった。そこで、Fc融合DCIRを用いて糖リガンドの同定、内在性責任細胞を同定した。また、糖リガンドを用い、細胞制御機構を詳細に解析した結果、DCIRはマクロファージ/破骨細胞を負に制御していることを見出した。(ii)関節炎発症候補遺伝子として見出された他CLRの自己免疫疾患への作用機序の解明 ホモ遺伝子欠損マウスを2系統樹立し、関節リウマチモデルであるコラーゲン誘導関節炎(CIA)および多発性硬化症のモデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を実施した。1系統については野生型マウスに比べ感受性に差は認められたが、他1系統についてはいずれの自己免疫疾患モデルに対して、明確な表現型の差は認められなかった。また、in vitro実験により詳細な細胞レベルでの解析を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ホモ遺伝子欠損マウスを樹立し、実験的自己免疫疾患モデルであるコラーゲン誘導関節炎および実験的自己免疫性脳脊髄炎を実施し、in vivoにける評価を行った。関節局所における病理組織解析、リウマチ因子の評価、サイトカイン発現動態解析をした。また免疫学的手法に従い細胞レベルでの解析を行った。これらはほぼ計画予定通りに進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
DCIRリガンドを用いた自己免疫疾患モデルマウスに対する治療実験を予定していたが、同定された当該リガンドは当初の予定を越え、希少かつ高額な物質であったため、実施できなかった。今後の課題として、DCIRリガンド代替品例えば、抗体や化合物などの開発が期待される。今回作出した2系統の遺伝子欠損マウスのうち、1系統は自己免疫疾患実験モデルに対して、感受性を示さなかった。今後、この遺伝子欠損によって個体がどのような病態・疾患を示すのか、例えばアレルギー疾患、感染症、ガンなどへの研究展開が期待される。
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