2012 Fiscal Year Annual Research Report
裁判員制度における裁判員の理解を法と心理学の知見から支援するツールの開発
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11J09990
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
山田 早紀 立命館大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | KTH CUBEシステム / 裁判員制度 / 供述調書 |
Research Abstract |
本研究の目的は、供述調書を裁判員にわかりやすく提示する目的で開発されたKTH(KACHINA CUBEシステム・TEM・浜田メソッドの略。主に刑事裁判の争点をマトリクス状に設置した概念マップを底面、供述聴取の時間軸を垂直面に取った3次元空間に供述者別の色分けした供述調書を配置するシステム)を実用化することであった。裁判員裁判では調書朗読に伴う審理の判りにくさが指摘されていることからこの問題点を改善することは裁判員の審理理解を改善することにつながる。本年度は、以下3点につき検討した。 1.研究事例数の蓄積実際に用いる弁護人との協働が必要であることから、昨年度に引き続き複数被告人の事件の資料についてKTHを3件作成した。その結果、KTH作成には事件の知識をある程度持った専門家らとの協議が重要であり、また協議によって議論が深まりKTHを用いる前には論点でなかった箇所に議論が及ぶ等、KTHが思考促進ツールとしても有用である可能性があることが示唆された。 2.作成手法マニュアル化上記の3件のKTHについてそれぞれを法学者・弁護士に見てもらって意見を求めることで、作成手法について検討した。その結果、概念マップ作成には弁護人との協議やテキストマイニングの導入の必要性が明らかになった。 3.虚偽検出の機能虚偽検出の仕組みについて検討するため、人が虚偽供述をどのようにとらえているのかについて調査した。 その結果、不自然な虚偽供述を被告人がしている場合、被告人は有罪であると判断されやすく、被告人が犯人ではないかもしれないという仮説を立てて判断できない可能性があることが分かった。このことから虚偽供述をKTHで示す場合は、被告人が犯人ではない可能性について考慮できるような概念マップ作成を工夫する必要性が明らかになった。 これらの成果はKTH実用上重要であり、KTHの作成方法について弁護人、一般市民の双方の視点から検討することができたことは実際の裁判場面での運用のために大いに意義があるといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画のうち、「研究数の蓄積」「マニュアルの作成」「虚偽検出機能」については計画通り進んでいる。今年度作成したKTHから得た知見をもとに、さらなるKTH作成の手法について着実に検討を重ねている。「効果測定」に関しては実施に至っていないが、他の研究者らと検討し文献レビューを重ねながら、準備をすることができているため、次年度以降の研究成果が期待できる。さらに国内外を含めて関連学会に参加し、積極的に研究成果を公表してきた。これらの取り組みから、本研究は研究計画とおりに進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、KTHの効果測定および、虚偽検出機能搭載のための検証をさらに継続する。効果測定については研究会での議論から提示方法や測定項目に関する検討をさらに進める必要があること判明したため測定実験の実施には至らなかった。しかし海外の心理学者や法学者や法の実務家の参加した研究会で測定方法について有用な知見がもたらされているため、そうした指摘をもとにして効果測定を実施する。これによりKTHの実用的な運営のための足掛かりを作る。また、虚偽検出機能に関しても心理学者との議論だけでなく、法学者や実務家らとの協働をもとにして検証し、KTHの機能としての搭載を目指す。さらに、平成25年度までに明らかになった研究成果は論文を執筆して公開し、博士論文を執筆していく予定である。
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