2012 Fiscal Year Annual Research Report
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11J09998
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
青山 晋 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 鞭毛 / ダイニン / 微小管 / MEMS |
Research Abstract |
真核生物の鞭毛・繊毛は9本の2連微小管が束になった構造を取っており、モーター蛋白質のダイニンが発生させる滑り力を駆動源として波動運動を行う。この鞭毛特有の波動運動の発生メカニズムの詳細、すなわちどのように滑り運動が周期的屈曲運動に変換されるか、については未だに良くわかっていない。 私は本研究において、微小管とダイニンから運動システムを構築するという方法でこの謎の解決を目指している。 前年度は、人工的に製作した微細構造を利用して、運動システムの骨格となる微小管配列の構築を行った。本年度は、実際の鞭毛構造と同じように配列微小管を互いに架橋し、そこにダイニンを加えて力発生させることで、鞭毛らしい屈曲運動を発生させることを目指した。 微小管間の架橋はMAP4と呼ばれる微小管結合蛋白質を用いて行った。この蛋白質はそれだけで微小管を束化させることが知られている。その束化させた微小管にダイニンを結合させてATPを加え、その微小管の束が屈曲運動を発生するかどうかを確かめた。そうしたところ、不規則的ではあるが微小管の束において屈曲運動の発生が見られた。一方で微小管を架橋しない場合は、ダイニンに力発生させても屈曲運動にはならずに微小管同士が解離してしまうので、微小管間の架橋が屈曲運動発生のための一つの鍵であることを実験的に示すことができた。 この結果によって、単に鞭毛の運動メカニズムの一端を明らかにしただけでなく、構築的な実験手法が多分子からなる生体システムの機能を知る上で有効に使えることも示すことができた。本研究で行ったような分子システム構築手順は、鞭毛運動に限らず、様々な多分子システムの研究に役立てることができると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画では、2年度目には微小管間を架橋して完全な屈曲運動を発生させるところまで進める予定であったので、十分とは言えないが最低限のラインまでは到達できた。最初は架橋蛋白質として別の蛋白質(タイチンと特異的結合タグとの融合蛋白質)を用いており、それが上手くいかず多少の遅れを生じてしまった。大きな遅れではないため、研究全体としては問題ない範囲である。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は1年度目の結果と2年度目の結果を組み合わせて運動システムをさらに洗練することを考えている。単にダイニンを微小管の束に加えるのではなく、ダイニン付きの微小管を微小管配列に加えてから架橋することで実際の鞭毛構造のようにダイニンに方向性を付けたり、微小管配列をコントロールできる利点を生かして相互作用する微小管の本数を変えたりして、微小管束の動きを見る予定である。鞭毛運動の発生にはどこが特に重要なのかをはっきりさせて研究をまとめていきたい。
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Research Products
(1 results)