2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J10026
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
平松 晃一 名古屋大学, 環境学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 地名辞典 / 資料目録 / アーカイブズ / 建造物保存 / 神奈川県 / Historical GIS / 場所の過去 / 資源共有化 |
Research Abstract |
1."共有可能な歴史地名辞典の構築"について、より広い視野からの意見を求めるため、多様な地理学研究者が集結するAAG(アメリカ地理学会)にて発表した。また、同学会の地名に関するシンポジウムに参加し、Historical GISの研究者と意見交換を行った。その結果、地名辞典共有の必要性は感じられているが、具体的な方策については研究されていないことがわかった。 2.場所の過去を示す資料を効率的かつ幅広く収集・把握するため、"資料と空間情報との連携"を目指したメタデータスキーマの設計を進め、経過を情報処理学会人文科学とコンピュータ研究会にて発表した。その結果、連携の意義やその方策については賛同を得られたが、「理念と実装とを分け、理念の主張を明確にすべき」との指摘を受け、資料と空間情報とを連携する意義、ひいては、場所の過去を示す資料を収集し共有することの意義について説明する必要があることがわかった。 3.以上より、"場所の過去"および"場所の過去を記録することの意義"について、人文地理学に立脚した考察を行うことに注力した。まず、大船捕虜収容所を事例として、これまで地理学で扱われてこなかった顕彰される以前の場所として同所を位置づけ、対立は確かにあるが、むしろ他と対立するほどには同所の解釈を一つに確定できない状況が一個人の中にすらある、という"場所の過去"の多様な解釈のあり方を明らかにした論考が、学会誌に掲載された。つづいて、"場所の過去を示す資料がどのように扱われてきたか"という視点から、都市再開発における保存建造物の選択過程を考察する論考の執筆を進めた。この過程で、収集した資料の資料目録と地名辞典との一部を作成し、再開発では残されなかったものの存在と、それを記録することの意義とを示す材料とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は、標準に基づく地名辞典・資料目録の構築と、それらを利用した時空間情報検索が行える簡易的なシステムの作成とを予定していた。しかし、学会はじめ様々な場での議論から、そうした実践的課題に取り組む前提として、"資料と空間情報とを連携する意義"を説明する必要があると考え、人文地理学に立脚して"場所の過去"および"場所の過去を記録することの意義"について考察する研究を中心にした。そのため、「研究の目的」のうち、システムの作成は達成できなかったが、歴史地名辞典・資料目録の構築は進めており、次年度に予定していた"場所に関する資料"を考察する研究を前倒しで行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画のうち、時空間情報検索システムの作成とその実証実験とをとりやめ、それらに代わって、人文地理学に立脚して"場所の過去"および"場所の過去を記録することの意義"について考察し、"資料と空間情報とを連携する意義"を説明する研究を中心に進める。ただし、研究全体として、実践的課題の解決を目指す方針は変更せず、そうした意義を説明する研究に加え、資料検索に利用可能な地名辞典の構築例を示し、データ構造の必要条件を明らかにする研究を行う。
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Research Products
(7 results)