2012 Fiscal Year Annual Research Report
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11J10190
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鶴岡 昌徳 東京大学, 大学院・経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 価格競争入札 / スコアリングオークション / 工事の価格・費用と品質の関係 / 一般競争入札 / 指名競争入札 / 事後的な工事価格の変更 |
Research Abstract |
昨年度の同資料でも記載したとおり、当初の研究目的であった「オークションと交渉の比較」を「一般競争入札と指名競争入札の比較」及び「価格競争入札とスコアリングオークションの比較」等へ変更した。申請者の研究は以下の3点から構成されている。一点目は「工事の価格と品質の観点からの一般競争入札と指名競争入札の比較」である。本研究では落札価格に加えて最終契約価格という施工者に対して実際に支払われた工事価格(工事費用の変更)及びその品質水準からもその効果を分析しているという特徴がある。更に、どのような要因で一般競争入札がうまく機能するかも議論している。二点目は、「スコアリングオークション(価格と品質の両方で落札者が決まる入札方式)と価格競争入札の比較」に関する構造推定に基づく研究である。この論文では、工事の品質と落札価格のデータを用いて、価格競争入札のモデルから工事の品質に対する費用関数と入札者の工事技術に関する私的情報の分布関数をノンパラメトリックに識別・推定する方法を提示する。これらの情報からスコアリングオークションでの価格や品質水準を数値的に導出する。この分析を塗装と橋梁について行う。それにより、どの種類の工事でスコアリングオークションが政府にとって有効かを議論できることが本研究の特徴である。 三点目は、工事費用の変更額と工事の品質水準の関係及び、その場合における最適な契約制度に関する構造推定を用いた実証研究である。工事の変更額がその品質水準に依存する価格競争入札モデルから、工事の品質に関する費用関数と企業の技術の私的情報の識別・推定方法をセミパラメトリックに議論している。そして、それらの情報から(1)契約額変更を無くした場合(2)最適な契約制度の両方の環境における工事の価格と品質水準を数値的に導出する。価格と品質のトレードオフを数値的に捉えている点が本研究の特徴である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度の同資料でも記載したとおりデータの取得や制度の理解に時間がかかっていたこと。 コンピュータによるプログラミングが必要な研究があり、そのコードを勉強することや実際に推計のためにそれを書くのに時間を要している。また、推計結果が思うように出ていないという問題もある。
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Strategy for Future Research Activity |
一点目の研究については、一般競争入札導入による「入札者数の変化」、「入札に参加する企業の組み合わせの変化」、「入札における勝ちやすさ」の観点から「どのような経済環境において、一般競争入札が機能しやすいのか」をより一層精密に実証していく予定である。二点目と三点目は随時コンピュータのコードを書いて推定していくだけである。ただし、二点目の研究については実際に日本で行われているスコアリングオークションのデータを使って価格競争入札との比較をしたところ、スコアリングオークションは橋梁、塗装ともに価格は増加しても最終的な工事の品質を向上させることはないという実証結果になっている。構造推定によって得られた結果とこれらの結果との比較も政策的意義のあることと考えている。
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