2011 Fiscal Year Annual Research Report
幻想の起源としての都市の表象研究―世紀転換期の欧米都市と幻想文学
Project/Area Number |
11J10309
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
坪野 圭介 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 世紀転換期 / 文化史研究 / 都市小説 / 幻想文学 |
Research Abstract |
研究課題に沿って小説テクストの選定と精読に努め、また、研究対象である19世紀から20世紀の転換期における都市の歴史研究・文化史研究を並行して行った。研究成果の一部に関しては、日本アメリカ文学会東京支部にて、「"The Love Song of J.Alfred Prufrock"と都市の視覚的イメージ」という題目で口頭発表を行った。この発表では、20世紀初頭の欧米諸国における、ボストンやパリ、ロンドンといった複数の都市イメージと、詩や映画、漫画といった複数の表現形式が生み出した多層的な想像力を視野に入れながら、1910年代に書かれたT.S.Eliot初期の詩を仔細に検討した。世紀転換期の欧米諸国で、複数の都市/複数の表現形式において同様の想像力が発現していたことを示すため、現在、今年度に発表予定の複数の論文を準備している。とりわけ、歴史と都市文化と文学的想像力の結節点としての、「万国博覧会」、「遊園地」、「都市のグリッド」というテーマについて、力を入れて研究を行っている。こうしたテーマに関して、ニューヨークにて渡航調査を行い、多くの資料を収集した。また、世紀末文学に関する研究会に定期的に参加しながら、世紀転換期・モダニズム期を対象とした英米文学に特化した研究会を自ら立ち上げ、研究課題についてより多角的な視野からの検討を試みている。同時に、修士課程まで主な研究対象としていたアメリカ現代作家スティーヴン・ミルハウザーの研究も継続し、世紀転換期から現在までの連続性について考察している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、ロンドン、パリ、ニューヨークなど複数の国における都市を分析対象としているが、本年度はとりわけニューヨークについて渡航調査を行い、十分な成果を得ることができた。また、20世紀前半に複数の都市のイメージを越境しながら詩作を行ったT.S.Eliotに特に注目し、作品の分析を行うことで、研究の土台となる視座を得ることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、19世紀と20世紀の転換期の欧米諸都市に関する比較文学的なアプローチをより積極的に進める。世紀転換期におけるライフスタイルの変化、交通手段やメディア環境の変化、都市間の人や文化の移動と交流といった文化史的要素と、個別の作家の作品とを比較検討しながら、研究課題である「人工性」というキーワードの射程を一層広げたい。特に、越境的に活動していた作家の作品に注目し、海外への渡航調査を行い、ロンドン、パリ、ニューヨークなどの主要都市に関する歴史的・文化的資料を収集する。また、研究経過を論文にまとめ、随時発表する。
|
Research Products
(1 results)