2012 Fiscal Year Annual Research Report
18世紀半ばのドレスデンにおけるイタリア絵画の受容に関する研究
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11J10347
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Research Institution | Aoyama Gakuin Women's Junior College |
Principal Investigator |
金沢 文緒 青山学院女子短期大学, 特別研究員(PD)
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Keywords | ドレスデン / 王立絵画館 / ベルナルド・ベロット / 美術館政策 / フリードリヒ・アウグスト2世 / ハイネケン / アルガロッティ / グアリエンティ |
Research Abstract |
本研究は、宮廷画家の地位を求めて辺境の北方諸国を目指した18世紀のイタリア人画家の汎ヨーロッパ的移動に着目し、この芸術現象に接近する手段として、彼らの目的地であり次の旅への出発点でもあったドレスデンにおいて、イタリア絵画がどのように受容されたのか考察するものである。 本年度は、絵画趣味の変遷についての考察を中心に進めた。昨年度に集積された情報を整理し検討した上で、ドレスデンの美術アカデミーの制度とその定期展覧会について調査を行った。具体的にはK・ビールマイヤーの先行研究の再検討を行い、そのうえで、ドレスデンの美術アカデミーに関する調査を行った。さらに、当時ライプツィヒで刊行されていた芸術雑誌Bibliothek der schonen Wissenschaften und der freyen Kunsteにおけるアカデミー展の展覧会評なども確認した。なお、イタリア絵画コレクションと招聘されたイタリア人画家の活動の関連に関しては、昨年度の研究発表を踏まえ、ドレスデンで現地の研究者の助言のもと調査を進め、一定の成果を得た。 また、昨年度の講演「ドレスデン王立絵画館の成立一近代美術館への歩み一」をもとにした論文が、『青山学院女子短期大学総合文化研究所年報』第20号に掲載された。さらに、18世紀半ばのドレスデンの芸術環境を考える際にカプリッチョという絵画ジャンルの同時代的な動向に注目し、その考察を踏まえ、本年度に日本で開催されたベロットと同時代の風景画家たちの動向を捉えた展覧会に関する報告としてイギリス18世紀学会への展覧会評を投稿した。なお、三菱一号館美術館で開催された『シャルダン展-静寂の巨匠』の展覧会カタログの執筆に参画し、シャルダンに関する批評の翻訳を担当した。この作業は、当時の絵画趣味の変遷についての考察の基礎となる絵画ジャンルの序列の問題を多角的に捉える一助となったことも付け加えておきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度はドイツにおいて実地調査を行い、一定の調査成果を得ることが出来た。ただ、研究機関の休館に伴い昨年度行えなかった調査が本年度も機関の都合により行えなかったため、来年度補う形を取りたい。また、年度末に学会にて調査成果を発表する予定があったが、健康上の理由によりキャンセルせざるをえなかった。これについては来年度以降再びその機会を探したい。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、昨年度の調査成果を踏まえ、18世紀半ばのドレスデンをめぐる美術状況に関して、王立絵画館との関係を注視しながら美術アカデミーの創設期について考察を進めることに心がけたが、王立絵画館に比べて、アカデミーについては十分な資料が残っておらず、その創設期を浮き彫りにするのは困難を極める。来年度以降は、資料が残るベルリン等のドイツのその他の都市の美術アカデミーの同時期の制度を把握し、そうした作業によってドレスデンの事例に接近していく必要がある。
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