2012 Fiscal Year Annual Research Report
発達障害児の実行機能の制約とその支援方法の開発に関する研究
Project/Area Number |
11J10662
|
Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
池田 吉史 東京学芸大学, 連合学校教育学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 実行機能 / 抑制機能 / 知的障害 / ストループ / 発達障害 / 運動機能 / 認知機能 / 支援方法 |
Research Abstract |
本研究の目的は、知的障害を含む発達障害児を対象として、目標志向的な行為を効率良く遂行するために必要な心理機能である実行機能のうち、特に発達的検討を行う際に重要とされる抑制機能に関する実態を明らかにし、その具体的な教育支援方法の開発に関する検討を行うことである。 今年度は、文字を使用しない非文字系刺激による検討の二つ目として、手指運動を用いた抑制課題(グーパー課題)を独自に作成して検討した。これは、モニタ提示されたグーやパーの手の形を見て、それを模倣して同じ手の形を出したり(模倣条件)、異なるもう一方の手の形を出す(対立条件)課題である。対立条件では、模倣傾向を抑制しなければならない。各条件について、反応として出すべき手の形を音声で随伴させる課題と随伴させず無言で行う課題を実施し、音声随伴の効果について検討した。得られた結果は、以下の通りである。まず、模倣条件よりも対立条件で誤答が著しく増加することが示された。次に、音声を随伴させることで誤答が減少することが示された。さらに、知的障害児・者においては、認識の発達段階(精選年齢)が低い者において音声随伴の効果が顕著であることが示された。 今年度に得られた知見の意義は以下の点にある。まず、発達障害児についてはこれまで文字系課題を用いて検討されていたため比較的軽度の知的障害を含む者しか対象にできなかったが、本研究では非文字系課題を用いたことで中度知的障害を含む幅広い知能指数の発達障害児を対象として抑制機能を検討できたことである。次に、有効な教育支援方法の一つとして、運動行為に対して音声言語を伴わせることが示唆された点である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、手指運動を用いた抑制機能課題を独自に作成して検討を行った。その結果、定型発達児・者を対象とした検討から重要な知見を得ることができた。また、発達障害児についても、従来に比べ対象者の幅を拡大してデータを収集することができた。これらについては概ね計画通りと良い評価ができる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策としては、今年度に収集した発達障害児のデータを詳細に分析することで、次年度以降の研究に繋がる視点を提供していきたいと考えている。
|
Research Products
(7 results)