2011 Fiscal Year Annual Research Report
農地景観の異質性が土着天敵の多様性と害虫抑制機能に与える影響の解明
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11J10687
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Research Institution | National Institute for Agro-Environmental Sciences |
Principal Investigator |
馬場 友希 独立行政法人農業環境技術研究所, 生物多様性研究領域, 任期付研究員
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Keywords | 生態系サービス / 土着天敵 / 農地景観 / アシナガグモ / 多様性 / 地理情報システム / 害虫防除 |
Research Abstract |
本研究は、水田の主要な捕食者であるクモ類を対象に、農地周辺の景観構造が捕食者の多様性と害虫抑制機能に与える影響の解明を目的とする。 初年度は農地景観と水田内のクモ類の個体数との関係を明らかにした。栃木県、茨城県における31箇所の水田を対象にクモ類の個体数調査を行い、そのデータを元に景観構造がクモの個体数に与える影響を解析した。解析手順として、まず地理情報システム(GIS)を用いて調査水田から半径2km以内の景観要素を抽出した後、クモ各種の個体数を目的変数、森林や農地などの景観要素を含む環境要因を説明変数とする統計モデルを構築し、景観構造がクモの個体数に与える影響を検討した。優占種であるアシナガグモ類、ドヨウオニグモ、ナガコガネグモを対象に解析を行った結果、周辺の農地面積割合がこれらのクモの個体数に影響し、その影響はクモの種類によって異なることが明らかとなった。すなわち、アシナガグモ類は農地の割合が増加するほど個体数が増加し、逆にドヨウオニグモやナガコガネグモは農地の割合が減少するほど、個体数が増加した。こうした景観から受ける影響の違いは、クモ各種の移入源となる生息環境の違いが関係していると考えられる。例えば、アシナガグモ類は湿地環境を主な生息地とするため、水田が生息地どしても機能し、その結果、農地がプラスの影響を与えていた可能性がある。逆にドヨウオニグモなどは水田以外の環境を主な生息地としているため、農地からマイナスの影響を受けていた可能性がある。この種間における生息環境の違いは、同時に実施した農地の周辺環壌におけるクモ相の調査結果からも支持されている。 以上のように、本年度は広域野外調査により、水田の主要な捕食者であるクモ類の個体数決定機構の一端を明らかにした。クモ類は作物害虫の密度低減に有効な土着天敵であることから、これらの知見は捕食者の機能を活用した農業体系の確立に資するものと考えられる。
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Research Products
(7 results)