2012 Fiscal Year Annual Research Report
会話における同期現象分析 -身体経験を表し合う相互作用の解明-
Project/Area Number |
11J10764
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
城 綾実 滋賀県立大学, 人間文化学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ジェスチャー / 同期現象 / 会話分析 / マルチモダリティ / インタラクション / 多人数会話 / 相互理解 / 進行性 |
Research Abstract |
これまでことば・身体動作の同期については研究者が取り決めた基準にもとづいて分析されてきたが,本研究では会話分析の手法を用いることで,当事者たちが「同時・同型」とみなすジェスチャー表現を同期として扱うことを可能にした.そして,ジェスチャーの同期の産出過程と相互行為上の効果を明らかにすることを目的とした.本年度の成果は以下の4点である. (1)語りの構造とジェスチャーの同期の産出位置:ジェスチャーの同期は,語りのクライマックスと語りの滞りの後に産出されることがわかった.特に二人が共に語りをおこなう際の語りの滞りでは,語りを再開するために,互いの足並みがそろっていることを聞き手に示すためにジェスチャーの同期が用いられることがわかった. (2)相互理解の構築と活動の進行性の両立を可能にするジェスチャーの同期:相互行為の中で理解を示し合ったり,経験を確認し合ったりすることは,相互行為を進めていく上で重要な基盤となる.他方,逐一理解を確かめ合うと,活動の進行性が損なわれ,たとえば一度見ただけの内容を再生するのに,記憶が薄れるという問題が生じる.本研究では,アニメーション再生課題という説明活動において,相互理解の構築と活動自体の進行性との両立にジェスチャーの同期が利用されることを示唆した. (3)pivotal transitionを可能にするジェスチャーの同期:ジェスチャーの同期でも,特に一部分を瞬間的に合わせることで,会話の中でこれまでの会話の展開方向を急激に変化させる場として利用されることがあることを示した. (4)「準備」として身体動作の認識可能性:ジェスチャーの同期を産出するためには,それまでの文脈やことばだけではなく,手や腕の形や動きそのものに,その後のジェスチャー表現のやり方を予測可能にするリソースがあることを実証し,明確な合図を用いなくても同期が可能になる理由を示した.
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