2011 Fiscal Year Annual Research Report
飽和炭素-水素結合の多様な高選択的直接官能基化法の開発
Project/Area Number |
11J10811
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
天岡 佑紀 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | N-ヒドロキシフタルイミド / ラジカル反応 / 炭素水素結合活性化 |
Research Abstract |
反応性の乏しいC-H結合の直接官能基化は、高度に酸化された天然物の効率的合成に有効である。本研究の目的は、C-H結合の高選択的なラジカル的活性化により発生させた炭素ラジカルを、種々のラジカル受容体に付加させる統一的手法により、網羅的な官能基化を達成することである。 これまでに、N-ヒドロキシフタルイミド(NHPI)と硝酸(IV)セリウムアンモニウム(CAN)の組み合わせを用いる、ベンジル位C-H結合の直接硝酸エステル化反応を新たに見出している。本反応では、NHPIのCANによる一電子酸化により、系中において生成するフタルイミドN-オキシルラジカル(PI-NO)が、C-H結合のラジカル的活性化剤として機能する。本年度はこの知見を踏まえ、酸素官能基や窒素官能基をはじめとする、多様な官能基が共存するベンジル化合物を基質として用い、本反応の化学選択性を調べた。基質の芳香環の置換パターンによる反応性の比較や、ヘテロ芳香環に隣接するC-H結合の反応性も明らかにした。生成物である硝酸エステルは、還元的処理によりアルコール、置換反応によりアジドやニトリルへ変換可能な、有機合成的に重要な中間体である。 さらに、NHPIとアゾジカルボン酸ジエチル(DEAD)の組み合わせを用いる、C-H結合の直接的な窒素官能基化反応を新たに見出した。本反応系において、DEADは一電子酸化剤およびラジカル受容体として機能する。すなわち、NHPIはDEADによる一電子酸化を受け、PINOに変換される。PINOは基質のC-H結合から水素原子を引き抜き、炭素ラジカルを与える。生じた炭素ラジカルがDEADに付加することにより、C-N結合を形成しヒドラジン誘導体へ変換される。様々な基質を検討した結果、ベンジル位C-H結合、プロパルギル位C-H結合、不活性炭化水素に含まれるC-H結合の、直接的な窒素官能基化に成功した。さらに反応機構解析を行うことにより、提唱機構の妥当性を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画していたNHPIとCANを用いる反応系の検討を行っていた際に、不活性炭素-水素結合の直接的な窒素官能基化反応を新たに見出した。これにより、当初の知見では困難であった、炭素-窒素結合の直接的な構築が可能となったため。
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Strategy for Future Research Activity |
NHPIとDEADを利用する、C-H結合の直接的な窒素官能基化を見出した。現在では基質の一般性は主にベンジル位C-H結合を標的として行っている。今後は、より反応性の低いプロパルギル位C-H結合や不活性な炭化水素のC-H結合を中心に検討を行う。また、反応系に他のラジカル受容体を共存させることにより、炭素-窒素結合のみならず炭素-炭素結合の形成など、より多様な直接官能基化法を開発する。
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