2011 Fiscal Year Annual Research Report
最終氷期以降の東アジア夏季モンスーン変動, 黒潮, ENSO変動とのリンケージ
Project/Area Number |
11J10914
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
久保田 好美 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 東アジア夏季モンスーン / 黒潮 / ENSO / 完新世 / 最終氷期 / 有孔虫 / 酸素同位体比 / マグネシウム/カルシウム比 |
Research Abstract |
本研究の目的は、最終氷期から現在にかけて東アジア下夏季モンスーンと黒潮、エルニーニョ南方振動(ENSO)変動のリンケージを解明することである。H23年度は、4万5千年前から3万年前にかけての東アジア夏季モンスーン変動の復元と、黒潮変動の復元手法の確立を計画していた。東アジア夏季モンスーン変動の復元については、東シナ海北部の堆積物コア(KY07-12 PC1)中に含まれる浮遊性有孔虫G. ruberの炭酸塩殻の酸素同位体比とマグネシウム/カルシウム比(Mg/Ca)を2.5cmおきに分析して、初夏の水温と塩分の指標である海水の酸素同位体比を推定した。その結果に基づくと、水温は平均して22℃であり、現在の5月から8月の平均値26℃と比べると、4℃程度低いことが明らかとなった。まだ、北大西洋高緯度域で見つかっている急激な寒冷・温暖を繰り返す気候サイクル、ダンスガードオシュガーサイクルに対し、その亜氷期・亜間氷期サイクルに東シナ海の表層水温変動は対応していないことが明らかとなった。このようにダンスガードオシュガーサイクルに表層水温の変動が対応していないことは、新しい発見であった。一方、塩分の指標である海水の酸素同位体比、つまり中国南部の降雨量変動は、ダンスガードオシュガーサイクルに対応していた。つまり、北大西洋高緯度域が寒冷化が起こったとき、南中国の降水量は減少していたことを確認できた。 また、黒潮変動復元については、H23年度は天候不良から、予定した航海で期待したコア試料が得られず、以前の航海により採取され保管されているコアで目的に合ったものを探すのに手間取ったため、過去の黒潮変動復元までには至らなかったが、手法の妥当性の検証は進んでいる。沖縄トラフの堆積物コアを用いて4種類の浮遊性有孔虫の酸素同位体比を分析し、大まかな棲息深度の推定を行ない、黒潮変動復元に最適な種の検討を行った。また、現在の沖縄トラフでの観測データの解析からは、黒潮の流軸と流軸から離れた東側の領域での水温差は、黒潮流量と正の相関があることが明らかとなった。水温差の変動幅は2℃程度であり、これはMg/Caから求められる古水温の誤差±0.5℃よりも十分大きいため、過去において水温差から輸送量を求める手法は妥当であると考えられる。H24年度は、沖縄トラフの黒潮流軸と流軸から離れた東側の領域それぞれで採取された堆積物コアを用いて過去の黒潮変動復元を行なう予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
黒潮変動復元について、H23年度は天候不良から、予定した航海で期待したコア試料が得られず、以前の航海により採取され保管されているコアで目的に合ったものを探すのに手間取ったため、過去の黒潮変動復元までには至らなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
遅れをとっている過去の黒潮変動復元を中心に研究を進める予定である。これまで,現在の観測データの解析からは,黒潮の流軸と流軸から離れた東側の領域での水温差は、黒潮流量と正の相関があることが明らかとなっている。つまり,過去において,2地点での水温差が復元できれば,黒潮流量を観測データが存在しない過去において定量的に復元できる。H24年度は、沖縄トラフの黒潮流軸と流軸から離れた東側の領域それぞれで採取された堆積物コアを用いて,堆積物中に含まれる浮遊性有孔虫,底性有孔虫の化学分析を行ない,過去の表層水温黒潮変動復元を行なう予定である。
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Research Products
(7 results)