2012 Fiscal Year Annual Research Report
飽和脂肪酸毒性における小胞体ストレス応答活性化の分子機構の解明
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11J10950
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
有山 博之 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 飽和脂肪酸 / 小胞体ストレス / IRE1 / リン脂質 / 脂肪毒性 |
Research Abstract |
肥満の進行に伴い、高血圧症、インスリン抵抗性、糖尿病および冠動脈性心疾患の危険性が高くなることが知られており、メタボリックシンドロームの発症と密接に関係している。脂肪組織に過剰に蓄積した脂肪は、その分解により多量の遊離脂肪酸が血中に放出され、高脂肪酸血症を呈する。高濃度の血中遊離脂肪酸は脂肪組織以外の細胞に取り込まれ、細胞障害や細胞死を引き起こす。この現象は脂肪毒性と呼ばれる。 近年、脂肪毒性は遊離脂肪酸の中でも飽和脂肪酸によって引き起こされること、飽和脂肪酸は細胞死のみならず、小胞体ストレス応答(UPR : Unfolded protein response)を引き起こすことが明らかとなっており、脂肪毒性が引き起こす病態において、飽和脂肪酸により誘導されるUPRの関与が注目されている。しかし、飽和脂肪酸によってどのようにUPR経路が活性化するのか、その詳細は不明であった。 当研究室では、リン脂質中の飽和脂肪酸の増加がUPRの誘導に重要であることを明らかにしている。本年度では、リン脂質中の飽和脂肪酸増加がどのようにUPRを誘導するか分子機構を解明するために、解析を行った。そこでIRE1をbaitとしたmembrane-yeast-two-hybrid(MYTH)による網羅的な結合タンパク質の探索を行った。その結果、小胞体局在型の膜タンパク質で、IRE1と結合するものを、5分子見出した。 これらの遺伝子をRNAiで発現抑制し、飽和脂肪酸によるuPRを抑制するものとしてERMusという分子を同定した。現在、ERMUSによるUPR活性化機構の解析を行っている。またERMUSのKOマウスを作製し、in vivoにおけるERMUSの寄与を調べる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
飽和脂肪酸によるUPR特異的に関与する分子ERMUSを同定できたから。これによって、飽和脂肪酸によるUPR活性化機構の解明が、大きく前進すると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
ERMUSがどのようにUPRを引き起こすか、培養細胞を用いて解析を行う。飽和脂肪酸がERMUSという分子にどのような影響を与えるのか、またERMUSがIRE1、PERKをどのように活性化するのか、二点の解析を行っていく。 またERMusのKOマウスを作製し、in vivoにおけるERMusの寄与を調べる。飽和脂肪酸エチルの投与や高脂肪食による脂肪毒性モデルを用いて、インスリン抵抗性への影響を見る。
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Research Products
(2 results)