2012 Fiscal Year Annual Research Report
子どものチックへの認知行動療法-生物・心理・社会モデルに基づいて-
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11J10989
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野中 舞子 東京大学, 大学院教育学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | チック / トゥレット症候群 / 認知行動療法 / 子ども |
Research Abstract |
本年度は, ①パイロットスタディの継続的な実施と体制作り, ②評価者の育成と評価項目の選定, ③現段階での成果報告を行った。 ①パイロットスタディについては, 継続的なリクルートと介入を行った。2012年5月に日本トゥレット協会が主催する医療講演会において研究の概要を講演したところ, 研究内容に関心を持つ者が多く集まった。しかしながら, 他病院に通院中の者が多く, 直接的な研究参加につながらなかったことから, 東京大学医学部付属病院外からのリクルートが可能な体制が望まれたため, その体制を整えた。その後も継続的なリクルートを行い、外部機関からの来談者も含めた一定数の症例が蓄積され、介入の効果もある程度示すことができた。 ②評価者間信頼性及び評価の妥当性の確認を行った。2012年8月にチック, 強迫症状及び社会機能についての半構造化面接を担当する評価者5名を集め, 日ごろの疑問についてのディスカッションを行い, 評価が確実に行われるように認識のずれなどを修正するとともに, トゥレット症候群への診療を専門とする医師のスーパーバイズをうけるなど, 妥当性の確保に努めた。また, 3つの模擬ビデオを通した一致率の検討を行った。このことにより, 第三者による介入効果の検討の信頼性と妥当性を向上させることができた。また, 昨年度バックトランスレーションを行った母親記入式のチック評価尺度の妥当性の検討も行い, 標準的な半構造化面接式の尺度であるYGTSSとの高い相関を確認できた(運動チック : r=. 714, 音声チック : r=. 695)。以上のように評価の妥当性を確保したことで, 介入の有効性を示すための土台が整ったといえる。 ③現段階の成果報告として, 探索的な事例の検討から得られた示唆についての発表を, 日本行動療法学会第38回大会において行った。行動療法を専門とする専門家と意見交換することが出来たとともに, チック障害に対する知見の少なさを他の研究者も実感しているとの声がきかれた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度の目的として, 継続的な事例への介入を通してある程度の成果を得るとともに, 介入の改良や発展に向けた示唆を得ることを目的としていた。平成24年の前半において, 介入事例の中で効果がみられない事例が存在したことから体制の見直しや評価者の見直しなどが求められたため, やや遅れが生じた。しかし, その後は予定通りのペースで継続的に介入を続けることが出来きたため, 大幅に遅れているとは言い難い。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の結果からは, チックの重症度の改善そのものが必ずしも本人のチックに対する捉え方と関係しないことが示された。以上から, チックに特化した行動療法ではあるが, どのような工夫をすることで, より参加者の生活の質を改善することに寄与できるのかを並行して検討することが今後は求められる。そのため, 国内外の研究者や臨床家と行動療法の有効性について議論を積み重ねるとともに, 日本トゥレット協会と連携をして, 介入効果研究を通して質的に得られた仮説について検討するための, 調査研究を実施する予定である。
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Research Products
(5 results)