2012 Fiscal Year Annual Research Report
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11J11044
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高山 大毅 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 江戸儒学 / 徂徠学 / 文人 |
Research Abstract |
今年度は、三都と地方との相違に注目し、江戸後期から明治初期に至る文人社会の変遷について、以下の三点に関して検討を進めた。 (1)古賀〓庵の学問の分析:江戸後期から明治初期の学芸の世界において、昌平黌出身の武士・学者とそのネットワークは大きな存在感を持っている。そこで、今年度は、古賀〓庵の『〓庵文集』及び彼の経書注釈を会沢正志齋や太田錦城の著作と比較しながら検討した。 〓庵の学問と、「学問所」の儒者としての問題意識との関連が浮かび上がり、江戸後期儒学の特色が明らかになった。また彼の詩文のついても従来注目されて来なかった特徴が分かった。 (2)三都以外の地域の祖徠学者に関する研究:三都の学風の変化と距離を置き、寛政期以降も祖徠学を中心とする学風を保持している地域について検討した。10月に、関西地方で資料調査を行い、三都と異なる、祖徠学を中心とした独自の学問の蓄積が存在することが見えてきた。また木曽福島の代官、山村家について調査を行い、流行と一定の距離を置いた詩風の存在を確認した。 (3).近世後期の「考証学」の検討:近世後期の「考証学」について、太田錦城の弟子で、考証の精密さで当時有名であった海保漁村の学問を分析することにした。彼は、『経学字義古訓』などで、漢代の儒者の学問の理解に心血を注いでいる。そこで、漢代の儒学に関するより深い知見を得るため、『後漢書』五行志の訳注作業に取り組んだ。これによって漁村らの学問の特徴や清朝考証学との関係について、全体的な見通しが得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
周到な準備の上で、関西地方や長野県での資料調査を行い、従来の研究の見直しを迫るような資料を発見することが出来た。また、研究成果については、書評論文及び海外での講演でその一部を報告したが、全体像を論文で公表するには至らなかった。そのため上記の評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
第一年度で得られた展望に基づき、資料調査を行うことで、研究課題の解決の上で重要な手掛かりとなる資料を見つけることが出来た。次年度は、本年度入手した資料の詳細な検討と、北九州での調査を行うことで研究目標の達成に尽力したい。
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Research Products
(3 results)