2012 Fiscal Year Annual Research Report
近現代天皇制に関する宗教史学的研究-皇族表象の分析を中心に-
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11J11132
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
茂木 謙之介 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 天皇崇敬 / 皇族 / 地域社会 / ナショナリズム / 近代日本 / 近代教育 / 文学と天皇 / モダニズム |
Research Abstract |
当該年度においては、1年目に引き続き、宮城および青森における皇族表象の分析、史料の発掘・整理・保存、埼玉県秩父市の秩父神社でのフィールドワークを行い、それにくわえ、宮内庁書陵部や国立国会図書館、国立公文書館、アジア歴史資料センターなどの所蔵史料の調査を行った。 まず、地域社会における皇族表象の検討については、昨年度に計画したように大正天皇第二皇子・秩父宮雍仁親王と関わりのある特定の地域に対して集中的に行った。まず東北への「御成」に関わる中核的な都市としての宮城県仙台市及び秩父宮の軍隊勤務のあった青森県弘前市、秩父宮が戦前に複数回おとずれ、その死後には神格化されることとなる埼玉県秩父市に於いて調査を行い、地域メディアを中心に戦前から戦後にかけての地域資料の収集に努めた。また、秩父神社にて現在も開催される秩父宮祭に参加し、参与観察を行い、それらの知見は日本宗教学会および日本民俗学会における学会発表に結実した。 また、宮内庁書陵部や国立国会図書館、国立公文書館、アジア歴史資料センターなどの所蔵史料の調査によって、法令、宮内・内務・文部の各省の史料、植民地関連の公文書を分析し、制度や宮内省の意図、皇族表象の政治的意図、天皇制教育における皇族の在り様、植民地の様相への理解を深めた。 また、当初の実施計画以上の達成としては、旧制中学校における校友会雑誌に関してより一層の史料の収集に成功した事、また方法をめぐって関与している文学研究分野において日本比較文学会東京支部例会及び叙述態研究会で研究報告を行ったことを挙げることが出来る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
特定の地域における当該問題への理解が深まったことに加え、教育学分野及び文学分野での派生的な研究報告を多く行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の方策にも挙げたように、天皇崇敬の問題を論じる上で近代における学校教育の問題は欠かすことが出来ないことを認識したため、そちらへの知見を深める。具体的には旧制中学校における校友会雑誌の検討を試みる。 また、特に地域社会と皇族を論ずる上で大正天皇第二皇子・秩父宮雍仁親王の重要性を確認したため、今後重点的に検討を加える。具体的には弘前・会津・秩父等の秩父宮ゆかりの地における表象を分析する。 文学と天皇制の問題を考える上で学生運動の隆盛を見た1960年代・1970年代の幻想文学をめぐる言説は確認しなければならない要素であり、今後より一層の検討を要する。
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Research Products
(10 results)