2011 Fiscal Year Annual Research Report
日本の対中政策における外務省の居留地(租界)政策の研究
Project/Area Number |
11J11167
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
渡邊 千尋 お茶の水女子大学, 大学院・人間文化創成科学研究科, 特別研究員DC2
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Keywords | 日本近代史 / 対中政策 / 居留地 / 租界 / 貿易 / 中国 / 上海 / 天津 |
Research Abstract |
本研究は日本政府の居留地(租界)経営政策とその実態の分析を通じて、日清戦争後から第一次世界大戦期までの日本の対中経済進出の実態の一端を明らかにするとともに、近代日中関係において居留地が果たした役割の実態を解明しようとするものである。 中国の日本居留地・居留民の実態に関する研究は従来二つの角度からなされてきた。一つは日本居留地・居留民が中国社会に与えた影響を解明するため、その背景となる日本居留地・居留民の実態を明らかにするものである(高綱博文、小林元裕ら)。もう一つは日本政府の対中政策の形成に日本人居留民が何らかの影響を与えたとみるものである(柳沢遊、桂川光正、幸野保典ら)。前者は広い時期を扱うが日本政府と居留地との関係を解明するものではなく、後者は政府と居留地との関係を扱っているが、反日運動等に中間関係が緊張する1920年代以降を対象としたものであり、それ以前は対象とされない。さらに日清戦争後から第一次世界大戦期の対中進出は政府主導であることが先行研究で明らかにされており(高村直助ら)、当該時期の居留地経営政策は居留民の声よりも政府の対中進出政策の一環として分析されるべきであろう。居留地を通じた対中進出を政策的に分析する本研究の意義はこの点にある。 本年度は第一に開設期の中国における日本居留地を研究する前提として、従来韓国におけるそれの延長として考えられてきた居留地経営政策を、中国に則して再検討した。これは「居留民団法の制定過程と中国の日本居留地-韓国との比較から」として、現在再投稿準備中である。 第二に日本の対中進出の背景となる租界をめぐる国際環境について明らかにするため、19世紀の東アジアにおける国際関係を主導していたイギリスの外交文書と議会文書の調査を行った。特に、8~9月にイギリスNAにおいて調査を行い、FO228のうち、天津・上海等主要な開港場駐在領事と本省とのやり取りを中心に収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
先行研究を精査したことにより、従来明確に意識されることの少なかった日清戦後から第一次世界大戦期の居留地研究、居留民研究と対中進出研究の関係性を明確にし、本研究の意義と今後の研究方針を定めることができた点は、当初の計画以上の成果であるといえる。また政府の居留地経営政策の実態分析の対象として北清-阪神ルートと横浜・神戸-揚子江ルートの二つを想定しているが、前者については史料収集をほぼ完了している。また当初の計画通り、イギリスNAにおける史料調査も行った。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の課題は横浜・神戸-揚子江ルートの実態分析と、こうした外国側の居留地(租界)経営に対して清国地方官がそれぞれどのように対応したのかを明らかにすることである。 平成23年3月から予定していた4か月間の上海調査は、受け入れ先の復旦大学朱蔭貴氏と相談の上、より深く調査ができるよう半年間に拡充し、平成24年9月から実施する予定である。渡航前にイギリス外交文書・議会文書、東亜同文書院関係史料、神戸・横浜等の商業会議所関係史料を中心に横浜・神戸-揚子江ルートの概要を把握しておき、上海では中国における先行研究を調査するとともに、劉坤一・張之洞ら清国地方官の経済政策とその中の外国租界への対応を中心に調べる予定である。
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Research Products
(2 results)