2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J40076
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Research Institution | International Research Center for Japanese Studies |
Principal Investigator |
米田 真弓 (中川 真弓) 国際日本文化研究センター, 研究部, 特別研究員(RPD)
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Keywords | 願文 / 菅原為長 / 菅芥集 / 蓮体 |
Research Abstract |
報告者の研究中断・再開のため、本年度は採用第1年度の後半にあたる。以下には、再開後の平成25年8月から26年3月までの研究実施状況について報告する。 本研究の柱の一つは、日本中世における願文執筆活動を明らかにすることである。その研究の始発として、中世菅家の礎を築いた菅原為長(1158~1246)に着目し、彼の願文作品集である『菅芥集』を取り上げ、考察をおこなってきた。この『菅芥集』以外にも、為長筆と考えられる願文の一つに、『本朝文集』巻66に収められた「為亡男某修冥福願文〈代法印宗清〉」がある。これは、貞永元年(1232)12月15日、石清水八幡宮の法印田中宗清が亡くなった長男のために供養をおこなった際、為長に執筆を依頼した願文である。この願文を取り上げた考察の一部を、国際日本文化研究センター共同研究「夢と表象―メディア・歴史・文化」(研究代表者 : 荒木浩氏)平成25年度・第3回共同研究会において発表した。 また本研究課題では、寺院の調査をおこなうことも研究の柱としている。本年度は、岡山県倉敷市の日差山宝泉寺において、所蔵資料の調査をおこなった。主要な所蔵資料のうち、3分の1程度まで写真撮影を進め、並行して外題・内題、奥書・識語等の調書を作成した。宝泉寺はもともと日差山の山上にあった寺院の一つであるが、織田信長による備中高松城水攻めの際に毛利・小早川隆景が陣所としたことから、他の寺院とともに山を降りた。その移転地には墓地があり、宝泉寺歴代住職の墓石が残されている。本年度の調査では、墓石を訪ね、宝泉寺本堂に安置されていた位牌との照合・確認をおこなった。これにより、今後は所蔵資料の伝授についても考察を加えていく予定である。また、寺が所蔵する蓮体自筆資料についても確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
報告者の出産・育児のための研究中断により、本年度は8月からの開始となった。研究実施期間においては、研究課題の中心となる菅原為長の願文について、これまで取り上げてきた『菅芥集』とは別の作品を考察し、その一部を研究会の場で発表した。この考察については成稿化する予定である。また、倉敷市・宝泉寺の所蔵資料調査に関しても研究をすすめることができた。このことから、研究はおおむね順調に進展したと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
菅原為長『菅芥集』所収の願文を取り上げ、その歴史的背景や人物関係、語彙・表現について考察する。各願文の考察で明らかにしたところを随時発表・論文化していく。また、『菅芥集』以外の願文についても考察を加える。 倉敷市・宝泉寺の調査については、仮目録の作成を目指す。 最終年度は10月で終了となるため、必要となれば研究開始当初の計画を前倒しして実施する。
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Research Products
(2 results)