2014 Fiscal Year Annual Research Report
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11J40076
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Research Institution | International Research Center for Japanese Studies |
Principal Investigator |
米田(中川) 真弓 国際日本文化研究センター, 研究部, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 菅原為長 / 願文 / 無名仏教摘句抄 / 田中宗清 / 本朝文集 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、願文製作の場としての中世寺院と、中世博士家による願文執筆活動を調査することにより、中世における願文製作の状況とその意義を明らかにすることにある。 本年は、菅原為長(1158~1246)が執筆した願文作品として、『本朝文集』巻66に所収される「為亡男某修冥福願文〈代法印宗清〉」を取り上げた。これは、貞永元年(1232)12月15日、石清水八幡宮の法印田中宗清が亡くなった長男のために供養をおこなった際、為長に執筆を依頼した願文である。考察の詳細は、「石清水八幡宮権別当宗清亡息追善願文考―菅原為長の『本朝文集』所収願文を中心に―」(『詞林』56号、大阪大学古代中世文学研究会)として成稿化した。さらに、上記の田中宗清を願主とする願文に見られる「夢」を取り上げ、「慶政の夢―造寺造仏と夢をめぐって―」と題した論文にて考察した(荒木浩編『夢みる日本文化のパラダイム』、法蔵館、2015年5月)。 また、研究対象の一つである寺院所蔵資料に関する調査としては、天野山金剛寺における科研調査(研究代表者:成城大学・後藤昭雄氏)に研究協力者として参加し、2014年10月に北京で国際シンポジウムがおこなわれた際に、「金剛寺蔵〈無名仏教摘句抄〉の書写とその周辺」という題で発表をおこなった(「仏教と文学―日本金剛寺仏教典籍調査研究成果報告国際学術シンポジウム―」、中国人民大学/中国、2014年10月)。本発表は、願文・表白等の佳句を類聚した摘句集の書写者とその活動について論じたものである。 そのほか、中世説話集の『宝物集』に見られる記事の伝本間における異同に注目し、その背景となる説話の違いについて論じた「『宝物集』往生人列挙記事と道命阿闍梨」(神戸説話研究会編『論集中世説話と説話集』、和泉書院、2014年9月)を執筆した。これは、大阪大学に提出した博士学位論文をもとに改稿したものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
報告者の出産・育児による研究中断により、本年度は第2年度にあたる。本年度は、昨年の口頭発表を成稿化し、また新たな口頭発表と論文執筆をおこなうことができた。 また、本年は、菅原為長とその作品を特に焦点化した、科学研究費・若手研究(B)(「菅原為長に関する資料および作品についての基礎的研究」課題番号26770097)にも採用された。 以上のことから、計画は順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の本科研は、10月末では終了となる。残された期間は、上記で述べた目的をもとに、願文作品に関する研究を引き続きおこなう。 また、岡山県内の寺院について、その聖教類の調査をおこなう。具体的には、寶泉寺(岡山県倉敷市)が所蔵する文献について仮目録(書目)の作成を試みる。 以上の研究で得られた成果の発表、成稿化を目指す。
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Research Products
(4 results)