2011 Fiscal Year Annual Research Report
発達過程の生殖細胞におけるp51(別名p63)の機能と制御機構の解析
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11J40093
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
藤村 維子 東北大学, 学際科学国際高等研究センター, 特別研究員(RPD)
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Keywords | p63/p51 / p53ファミリー / 分化誘導 / 始原生殖細胞 / ES細胞 / 生殖幹細胞 |
Research Abstract |
p63は癌抑制遺伝子であるp53ファミリーのメンバーの一つである。p53がほぼ全ての細胞で機能しているのに対しp63は皮膚や四肢などでの組織特異的な機能が知られる。p63には機能の異なる少なくとも6種類のアイソフォームが存在し、皮膚ではこれらp63アイソフォームの発現量のバランスが細胞の分化および生死を制御することが知られる。p63はマウス胚の生殖細胞にも発生過程早期から選択的に発現しており、生殖細胞でも一部のアイソフォームが幹細胞で機能し分化の制御に関与していることが予想されるが、詳細は不明である。そこで本研究では、p63アイソフォームが生殖細胞の形成や分化、未分化性の維持に及ぼす影響を明らかにすることを目的としている。 平成23年度には、未分化な生殖細胞の生死/発生分化制御におけるp63の機能を解析するために複数のin vitro培養系を試行し解析系の確立を試みた。その結果、2種類の培養方法によりそれぞれ複数の分化マーカー遺伝子の発現上昇が確認され、始原生殖細胞(PGC)様細胞の分化誘導が観察された。実際にp63の強制発現およびsiRNAによる機能阻害を行い、発生過程の生殖細胞にあたえるp63の機能解析を試みたところ、一部の条件下では、TAおよびdNタイプのp63アイソフォームの過剰発現がPGC様細胞の形成に抑制的に、機能阻害が促進的に働くことが判明し、p63が生殖細胞の形成を抑制する効果を持つ可能性が示唆された。また、TAおよびdNタイプ両方のp63機能阻害を行なうと細胞が扁平に分化した形態をとることも判明し、p63の発現量が生殖細胞の分化に何らかの影響を持つことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画において、初年度は、各種培養法を検討し雌性生殖細胞の分化発達の解析に最適の培養系を選択しp63遺伝子の発現変動を解析することおよび機能阻害および強制発現に用いるsiRNA、発現ベクターの準備を行なうことにあった。なかでも、マウスESの培養による生殖細胞の分化誘導の変法を用いると、効率よく(約14%)生殖細胞へ分化させることが可能で、未分化状態では、TAp63の発現量が高く分化後にはΔNp63の発現量が高くなることがわかった。これが達成されたことは、今後の研究の進展に大変有効であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は本年度に得られた結果の検証を進めるとともに、p63の機能に関わる下流および上流の分子メカニズムについて解析を進め、発現量の調節を可能とするウイルスベクターによる詳細な解析も試みる。また、同様の機能解析を精原幹細胞に適応することも準備中である。これらより、未分化な個々の生殖細胞における、生死、分化、増殖、腫瘍形成のp63を中心とした制御ネットワークについて明らかとしていく計画である。
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