Research Abstract |
固体表面の濡れ性制御は産業や日常生活において重要であり,特に水だけでなく油もはじく超撥水・超撥油表面は,液滴に濡れないことから,汚れの付着防止や,金属等においては防食の効果も期待されている。これまでに,超撥油表面の作製には,異なるスケールの凹凸を有する階層構造が有効であり,スパッタ法とアノード酸化を組み合わせれば,アルミニウム合金上でも達成できることを明らかとしている。しかし,どのような凹凸がより撥油性の向上に有効であるかについてはわかっておらず,また,プロセスの複雑さが課題であった。本年度はナノ/サブマイクロ階層構造におけるナノスケールの凹凸の撥油性に及ぼす影響,および,アノード酸化を主としたスパッタ法を用いない簡便なプロセスによりアルミニウム金属上に超撥油表面を作製することについて検討を行った。その結果,ナノ凹凸の影響については,液滴と固体表面の付着力に由来する接触角ヒステリシスと,ナノポアの面積割合に良い相関関係が見られた。このとき,前進接触角はナノポアの面積割合によらずおよそ160°であったが,後退接触角は面積割合の上昇とともに増加した。これは,ポアの面積割合が大きい場合,ポアによる液滴のピン止めが優勢となったためと考えられる。このことから,本来は親油性の表面であっても,ポアの面積割合を高めれば,浸透を抑制できることが明らかとなり,超撥油表面の作製における設計指針を提示できた。また,アノード酸化を主要プロセスとする超撥油表面の作製では,アルミニウムを異なる電圧で二段階アノード酸化を行うことで,高電圧アノード酸化により作製したサブマイクロポア表面上に,低電圧アノード酸化によりナノポアを作製することにより階層構造を構築した。その結果,その表面は超撥油性を示し,ウェットプロセスのみにより,超撥油表面を作製することが可能となり,超撥油表面の実用化に大きくつながる成果が得られた。
|