Research Abstract |
本研究では,アイゼンシュタイン級数のフーリエ係数を明示的に求めることや,アイゼンシュタイン級数からなるp進解析的な族の構成や,それらの応用を目標としています.23年度は,まず,総実代数体Fと任意の次数nについてヒルベルト・ジーゲルアイゼンシュタイン級数G_{k,x}を構成しました.ここでkはウェイトで,xはFのヘッケ指標です.H_nをジーゲル上半空間とするとき,G_{k,x}はH_nの[F:Q]個の直積上の関数です.このアイゼンシュタイン級数G_{k,x}のフーリエ係数はオイラー積表示をもちますが、xが分岐する有限素点でオイラー因子は明示的に計算できます.また,フーリエ係数がある程度明示的に分かるので,G_{k,x}がp進解析的な族をなすことが分かります.以下,簡単のため,Fの有限素点pについて指標xは,pでのみ分岐し,pは2の上にないとします.このとき,xが2次指標でなければ,G_{k,x}はアイゼンシュタイン級数E_{k,x}に一致します.ここでE_{k,x}は合同部分群Γ_0についての通常のヒルベルト・ジーゲルアイゼンシュタイン級数です.正確な定義はここには書きませんが,志村先生の論文で扱われているようなものです.Fが有理数体の場合,不分岐な素点でのE_{k,x}のオイラー因子は桂田氏(室蘭工業大学)によって明示的に計算されています.アイゼンシュタインG_{k,x}の分岐する素点でのオイラー因子は本研究で明示的に分かっているので,Fが有理数体でありZが2次指標でなければE_{k,x}のフーリエ係数が明示的に分かります.E_{k,x}のフーリエ係数の明示公式はxが不分岐の場合には,上記のように桂田氏によって得られましたが,xが分岐する場合はおそらく難しいだろうと考えられていたので,完全な結果ではないですが,本研究には意義があると思います.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
9.で述べたようなことは,ある程度は,23年度の初めの時点でできるだろうと思っていたのですが,部分的には予想していなかった結果が得られたので,おおむね順調に進展していると言えると思います.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,今まで行ってきた研究の応用をしてみたいと考えています.例えば,カスプ形式とリフトの像に入っている保型形式との合同の存在がある保型形式に付随するガロア表現のセルマー群の非自明な元を生み出すことがあるという研究がいくつかありますが,それにもは,アイゼンシュタイン級数を使われているので,何か応用ができればよいと考えています.
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