2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J56662
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Research Institution | Tokyo Polytechnic University |
Principal Investigator |
アキノロンワルド エマニュエルラモス 東京工芸大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 減衰の振幅依存性 / 耐風設計 / スティック-スリップ摩擦 |
Research Abstract |
減衰性能は風荷重に対する建物の応答を決定付けるために最も重要なパラメータのひとつであり、このパラメータを正確に把握しないことは構造設計に対する信頼性の低下に直接つながるものである。風荷重作用下の構造物の減衰はいかに構造物自体が弾性領域に収まっていても、例えば非構造壁と構造部材の間に生じるStick-Slip摩擦により発生することが考えられる。この摩擦の構造体に対する影響を完全弾塑性バネでモデル化することが可能であるが、いままでにそのような減衰を評価した研究例はない。その代わりに二種類の減衰が用いられている。ひとつめは振幅の変化に対して減衰が一定値を取ると仮定し、もうひとつは振幅の増大に伴って減衰が増大し最大値に達するというものである。本研究ではStick-Slip摩擦の基本的な特性を明らかにするために単純な1自由度の振動系に1つのStick-Slip要素を組み入れたときの挙動をシミュレートする。これによりひとつのStick-Slip要素が構造物の減衰性能に与える理論的な式を導き出す。さらにはそれを用いて異なる確率分布を有する種々のレベルの外力が作用する複数のStick-Slip要素を内包するシステムの減衰についての理論式に発展させる。理論式の妥当性の検証のためには第一に、複数のStick-Slip要素を組み込んだシステムに対する数値解析結果と算出された減衰の振幅依存性を比較し、第二に論理的な乱数を伴った擬似乱数を数値的に発生させて比較する。次に理論的表記と5種類の異なる確率分布など種々のパラメータにおいて検討を行った。その全ての結果が構造物の応答振幅が増えるほどに減衰定数が高くなる結果を示した。そのうちのいくつかのケースでは増大がゆるんで一定値に漸近する様子が見られる。またそれら全てのケースにおいて最大値を迎えたのちには再度減衰が小さくなる結果が得られた。本研究では以上示してきたような新たな構造物の、耐風設計を行うに必要となる減衰定数のモデル化を行う方法の提案である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
基礎的な解析モデルの構築が完了していると共に、妥当性の検証のために模型実験を計画し、2体の基本パラメータの実験模型の設計、作成、それらを用いた実験を行った。実験を行った結果改良するべき点などが見つかった。一方でデータ分析も開始している。国際会議でその成果は公表され、現在国際ジャーナルの原稿の執筆が最終段階に入っている。当初の予定に及ばなかったのは国際ジャーナルの提出のみである。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに最も単純なせん断系1質点モデルについて解析的に実験的に検討を進めてきた。 得られた成果について国際ジャーナルで公表すると共に、今度はせん断系多質点モデルへと拡張させて、Stick-Slipモデルによる数値モデルの構築と実験的方法を用いた検証をすすめ、モデルの妥当性の証明も含めて進めていく。さらにここまで行なってきたのは、数値モデル構築のために理想化したモデルを対象としてきているが、最終的には実際に建っている建築物(中層建物および高層建物)にセンサーを設置して実測を行うことで、本モデルの妥当性、あるいは実現象との開が出た場合にはその要因の解明と数値モデルに反映させる方向性について検討を重ねていくこととする。
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Research Products
(1 results)