2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12650006
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
上野 啓司 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (40223482)
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Keywords | 空孔 / 空孔規則配列 / Ga_2Se_3 / エピタキシャル成長 / C_<60> / bilayer-GaSe終端Si(111) / 多孔性物質 / フォトルミネッセンス |
Research Abstract |
単結晶薄膜成長の研究では,結晶内に発生する「空孔」は「欠陥」として忌み嫌われているが,その「空孔」が結晶内に多数個,しかも規則的に存在する,となると状況は一変する。例えば,サイズと個数が結晶構成原子と同程度の「空孔」が結晶内に規則的に存在すれば,それは周期ポテンシャルとして電子状態に作用し,その物質の電子・光学物性を決定する因子となりうる。また,数nm〜数十nm程度の空孔を酸化物結晶内に規則配列できれば,その物質はゼオライトと同じ多孔性物質となり,新奇な触媒・気体吸着材料としての利用が期待できる。さらに形成した空孔内に任意の元素を挿入できれば,元の結晶とは全く物性の異なる新奇機能性材料を形成できる。本研究ではこの「空孔規則配列構造」を薄膜結晶内に形成する手法の確立と,機能性材料としての物性発現を目指している。本年度の研究成果は, (1)III_2-VI_3化合物半導体薄膜の成長は,これまではGaAsやGaPなどのIII-V化合物半導体基板上で専ら行われてきたが,デバイス応用を考える上ではSi基板上への成長が重要である。特にGa_2Se_3は格子定数がSiとほぼ一致し,格子不整合欠陥のない良質な薄膜の成長が期待される。そこで,single-domain 2×1構造を持つ微傾斜Si(001)清浄表面上にGa_2Se_3薄膜の成長を試みたところ,基板温度480℃,VI/III比1000の条件下で,Ga空孔が規則配列した単結晶Ga_2Se_3薄膜を成長することに成功した。また,基板温度が500℃を超えると空孔は規則配列せず,一方420℃より下では一部が多結晶成長し膜質が低下することも判明している。さらに成長した薄膜のフォトルミネッセンスを6.5Kで測定したところ,650nm〜1000nmの波長範囲にわたるブロードな発光ピークが観察されており,現在その起因の解析,及び基板温度依存性の測定を進めている。 (2)C_<60>分子を選択成長した後酸化物薄膜で被覆し,その後C_<60>分子を酸化除去することで1nm径の空孔を規則配列することを目指しているが,bilayer-GaSeで終端したSi(111)表面が平坦かつ不活性であり,C_<60>分子の選択成長基板として有望であることを見出している。
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[Publications] K.Iizumi et al.: "Investigation of epitaxial arrangement and electronic structure of a La@C_<82> film grown on a Mo_2 surface"Physical Review B. 62. 8281-8285 (2000)
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[Publications] 上野啓司: "異種原子終端Si基板上でのフラーレン分子のエピタキシー"信学技報. 100巻245号. 51-56 (2000)
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[Publications] 飯泉謙一,小間篤: "金属内包フラーレンのエピタキシャル成長と電子状態"信学技報. 100巻245号. 45-50 (2000)
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[Publications] 上野啓司: "層状物質基板"表面科学. 21巻11号. 716-723 (2000)
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[Publications] K.Ueno et al.: "Fabrication of GaAs Quantum Dots on a Bilayer-GaSe Terminated Si (111) substrate"Japanese Journal of Applied Physics. (印刷中). (2001)